Feurich UP 響板埋木作業

響板にはかなり割れが見られた。まずはデカールを保護した。幸いこの箇所に割れが見られなかった。

デカールの保護

その後、アルコールでニスをさっと取り、埋木修理していった。
トリマーで溝を作り、そのトリマーと同じ断面を持つ埋木材を埋めていく。
トリマーで綺麗な断面が出来ればいいのだが、古い木材は素直に削られてくれない。一本一本溝に合わせて埋木材を加工していく。
気の遠くなる作業の一つ。

響板埋木作業
5月と6月ともに、自分は外出することが非常に多く、今回は一本も自分は作業していない。
もう少しで埋木は終わる。そのあとは響板再塗装をする予定。

因みに、今回はハンマーを、パリ郊外のハンマー屋に巻き直してもらう。日数的に間に合うと思い、船便で3月に送った。
その後出国してからなかなかフランスに着かず、少々焦ったが、先日フランスに到着したことが分かった。
正直ホッとした。

 

Feurich UP 駒トップの交換 その②

駒の上部を大まかに形を作り終えた後、
下部の上面と、上部の下面を合わせなくてはならない。これを鉋でやっていく。

楓やブナ材の鉋掛け。針葉樹の木材を切る時よりも、研ぎの角度を大きめの物を使う。妻が家事や他の仕事の合間に進めていってくれた。
自分が工房にいないときだったので写真が無い。残念。

面が合うと、上部と下部が少し吸い付くような感じになる。

接着前に、接着面を少し粗くする。今回は位置決めのガイド無しなので、3人で接着作業の予行練習をした。

接着 事前準備

接着作業。写真はこぼれ落ちた接着剤を拭いた後。

中低音部の接着

最高音部は治具が入らない為、工夫した。

高音部の接着

 

下の面を突き上げるために、写真のようなジャッキを使った。写真のジャッキの位置だと良くない。撮影後調整修正した。最高音部だけ自分一人だったので大変だった。

高音部の接着 下の支え

因みにNPO燕三条エラール推進委員会のエラールの専属調律師をさせていただいている。柿澤さんが修復したピアノ。きちんとされていて安心して作業できる。
三条市も燕市も刃物で超有名で、他の地域のと比べると、今のところ一番使いやすい。私たちの力加減と合っているのかもしれない。
先日伺った際に委員会の代表の方に、ノミの話をしてみたら、ご親戚がノミ作りで大変有名な方と知らされた。

そのうち家族で三条市に伺うことになると思う。

Feurich UP 駒トップの交換 その①

響板の修理をする前に、駒上面の交換作業をしていきます。

まずは駒ピン抜き。今のよりもやや細めで鉄ピン。太さを測定。

駒ピン抜き 1

上面の測定と、駒削ぎをコピー。

駒上面の測定 2

 

駒上面の削り出し

低音駒は駒のトップが接着剥がれを起こしていたので簡単に剥がれた。

駒トップ剥がし 3

 

高音から中音の終わりにかけてはカンナを使った。

駒トップ削り 4

 

ピン穴を同じぶな材で埋める。

駒ピン埋木 5

 

駒のトップの材料は、カエデ材。駒の下地とカエデ材を合わせてから接着。この作業が大変難しい。

駒上面接着準備

こうして写真を載せて文章を書くと、ほんと難しさが伝わらない。

そして刃物の質と砥ぎが、これからの作業の質に関わっていることは忘れてはいけない。

Feurich UP 解体と側板の接着

掃除を終えた後は、解体していきます。
今回は響板や駒の修理もしなくてはならないので、棚板を外します。

低音弦のヒッチピン側の処理が、いつも見るそれとは違う。よく見ると2重に巻かれている。これはフランスのピアノをやる時によく見る。しっかり固定されていて、外すのが大変だった。

脱弦 低音弦
ループ弦がない、全て一本弦。意外と時間が掛かった。

脱弦作業
外している最中、低音駒がクラクラしてた。手で簡単に取れてしまった。

低音駒 トップの割れ
鉄骨を上げる。事前にアクションボルトを外しておいた。もちろん寸法を測定した後に。鉄骨が水平にうまく持ち上がるように、スリングベルトの位置や長さを丁寧に調整してから実施。

鉄骨上げ作業
鉄骨を戻す時用に、スリングベルトの位置を撮影。3本のベルトが正三角形に近いほどいい。

鉄骨上げ スリングの位置

鉄骨を上げてから、上面の掃除。ついでに割れなども確認。

鉄骨上げ後 掃除

 

高音側の側板が剥がれかけている。低音側の側板や天屋根はしっかりついている。温湿度変化がかなりひどかった箇所と判断し、
完全に剥がさず、可能な限り接着剤を流し、クランプでとめた。

側板の剥がれ

側の接着 クランプ
垂れてくる接着剤をまめにふき取りながら作業した。念のため3日間おいた。無事に接着していた。

側の接着作業 2

次回は駒の上面の交換について書きます。

 

Feurich アップライト 1923年製

今年もよろしくお願いします。

現在工房では、Feurich(フォイリッヒ)のアップライトピアノの修復作業をしています。

お付き合いのある技術者様から、紹介していただいた方のご両親が所有しているフォイリッヒ。
響板修理を含めたオーバーホール作業をし、音とタッチも復活させ、次の所有者の元へ行く予定。

正面

斜め

後ろ
側板が剥がれかかっている。他にも接着剥がれの箇所が多く、大掛かりになりそうな予感。

側板の剥がれ

まずは掃除から。

背面の掃除

底板は、リムや鉄骨と触れないように設置されている。音響に直接かかわる箇所とは接さないような造り。

底板

パネルを外し、弦の測定をほぼ終えた。

パネル外し後
次回は脱弦以降を書いていきます。