YAMAHA 2型 アクション修理

アクション修理について書きます。
写真撮り忘れだらけなので、言葉で補います。

今回も全て外し、センターレールの確認からです。ネジバカは直しました。
アクション作業風景

このヤマハ、ウィペンヒールクロスが無く、鍵盤のキャプスタン上面にクロスが貼ってあるタイプ。日本、アメリカ、フランスのでよく見るけど、ドイツのでは見たことが無い。

ウィペン

ウィペンフレンジの接着の確認。
一つとれていたのがあったので、全て外して付け直した。

ジャック外し

ジャックフレンジ接着

バットスプリングの交換。今のバットよりも寸法が小さく、交換不能な為、加工した。

バット加工

バット加工②

左が交換前。コードもスプリングのかなり細い。
このピアノは、ネジが少なかったり、木材が小さめだったり、支柱がこの時代のピアノの割に細かったりと、何かにつけて材料少な目にしている感じだった。オーディオの理屈からしたら、余計なものが無い方がいい、とも言えるし、問題ないのかもしれないけど、普段見慣れている物とは違うだけで、ちょっと否定的な気持ちになる。でも要所はしっかり押さえているのは分かる。

ハンマー オリジナル

ここからは、画像無し。ダンパー交換。初めから欠損していて、新しく加えた。
フェルト類は全て交換し、ワイヤーは磨き、ダンパースプリングも交換した。

ダンパーの欠損

 

 

ハンマーヘッド。形からアメリカ製と思うようなものだった。リベットの方法も、貫通させてから開いて止めるのではなく、ねじって止めていた。
これも写真撮ってない。ハンマー横から

鉄骨も、ハンマーも、どこかアメリカを感じる。ハンマーはオリジナルではないかもしれないけど。
因みにハンマーの角度が上向きぎみだったので、交換した時に補正した。お客様の好みの音を考え、レンナー製に交換した。

次は、鍵盤について書きます。

 

YAMAHA 2型 本体作業

工房は前回のプレイエルと、その前のホルーゲルがあまりにも大変だったため、半年から1年も完成を待たせてしまっているお客様がいてご迷惑をかけている状況です。今回から推定、昭和元年~4年製のヤマハ2型(85キー)の修復過程をお伝えします。

もう5年以上前に、ある工房で処分される直前だったところ、たまたま妻が居合わせて引き取ったピアノ。私よりもピアノに詳しいお客様にお伝えしたところ、是非購入したいと仰ってくださり、修復、販売することになった。

2型正面 縮小

 

修復前の音は、以前とりあえず記録した。

YAMAHA 2型 修復前

恐らく象牙だったのだろう。鍵盤上面が剥がされて、木部がむき出しになっていた。

鍵盤 鍵盤蓋ロゴなど

 

弦に関わる箇所では、ピンブッシュが無く、プレッシャーバーが大きく、弦が少し細めで、
アメリカのピアノ、特にスタインウェイを想起させるものがあった。
この頃のヤマハは、ベヒシュタインのシュレーゲル、山葉直吉、大橋幡岩、河合小市が在籍していた時期に近く(もしかしたらまだ在籍していた)、アメリカの影響を受けているだろうこの設計には、少々意外な感じだった。恐らくその前からある型なのだろう。
因みにアメリカのピアノから、ドイツよりはイギリスやフランスを感じる時が多い。

正面内部2

 

支柱が丸いダボで接続されている(写真下の小さな〇)。底板(写真上部)が底面を全て覆い隠していない。

底板、支柱の〇ダボ

 

脱弦の作業中。

脱弦作業

 

鉄骨を外し、諸々確認。高音部の処理が丁寧。

最高音部 駒など

 

鉄骨リブ部の駒の切り欠き。半円状になっていた。初めて見た。

高音部駒の切り欠き

 

駒ピン磨き。かなり細いピンが使われていた。ピンの一部は交換した。

駒ピン磨き

 

このピアノ、いつものピアノに比べて、材料が少ない。腕木を支持しているマイナスネジ、いつもは4つ使われているが、3つしかない。

低音部側内側

 

ピンずるがひどかった箇所は、ダボを入れて、新規に穴開けをして対処した。合計約20か所はあった。

ピンダボ

 

鉄骨を外した後、響板を叩くとあまりいい音がしなかった。調べたら底面部で響板が一部剥がれていた。

あえてしっかり剥がして、接着剤を流して、クランプした。接着後、いい音が出るようになった。

底の響板接着

 

掃除や磨きをして、鉄骨を合わせをした。

弦を外す前、ピンブッシュが無く、ピンが少し傾き鉄骨穴と接触していた箇所があった。これを解決するために、ほんのわずかに鉄骨が底板側になるよう、ピン板下部と鉄骨の間に薄い化粧板をかませて、少々強引に鉄骨を合わせて、ネジ締めをした。

鉄骨合わせ

 

オリジナルを尊重し、ピンブッシュは使わずに張弦した。

張弦後

こう書いてみると、サラっとやってのけたように感じるが、結構痺れる判断決断があった。特に鉄骨合わせでは、ほんの0.5mm鉄骨を下にしたかったのだが、なかなかうまく行かず手こずった。何度も上げては下げてを繰り返した。

ただ、一つ安心だったのが、支柱の造り。ここにいい材料を使い、しっかり理にかなった構造だったら、アップライトはほぼ間違いないと思っている。因みにこの支柱は、上が太く下が細い。大橋さんがらみのピアノでよく見る設計。

支柱掃除

 

次回はアクション関係について書きます。

 

 

 

 

 

 

 

Pleyel AL アクションの簡単な説明と、修理その①

今回はアクション修理について書きます。

プレイエル社設計、シュワンダーが製作したアクション。(ハンマーとシャンクを交換後に撮影)

アブストラクト機構 横から

 

鍵盤のウィペンがつながっている、アブストラクト方式。

アブストラクト機構 接続部拡大

アブストラクト機構 正面から

 

この1952年製のALは、100年以上前と同じ、ハンマーのセンターピンが各セクションで一本の方式を取っている。(小型の機種では途中変更もあった)

作業前ハンマー  ハンマーフレンジ

プレイエルだけは、モダンピアノになっても、この横につながったタイプを採用し続けているのには、何かしらの訳があるのだと思う。
理屈上、ハンマー軌道は全て同じになる。ただ、現実、これだと、いろいろ問題が出てくる。また、問題が出たときに対処しずらい。

 

作業風景。各項目を診断、測定し、ばらして修理していった。

アクション作業風景

 

ハンマーレールを整えていく。そもそも構造が弱いため、かなり痛んでいた。

レペティションレギュレチングスクリュー磨き

 

ドロップスクリューを磨きながら、レールの痛みに気が付いた。所々ヒビが入っていて、スクリューが緩んでいた。全て外して、接着補強して対応した。
(余裕が無くて作業写真を撮り忘れた)

レペティションレールの破損2

レペティションレールの破損

レギュレチングボタンパンチングクロスの交換

レギュレチングボタンクロスの交換

ダンパーレールのカンナかけ(作業写真無し)

ダンパーガイド 中高音部

 

ジャックのレバーのこすれ直し。センターピンは曲げずに、ジャックのサイドを削って対応した。紙2枚隙間があればなんとかなると思う。本当は真ん中にしたいけど、。

ジャック左右の悪さ

 

ジャックやレバーに黒鉛を塗った後、レペティションレバーカパリングの交換をした。

レペティション受けスキンの交換 Before after

 

これを進めていたのは、2024年8月頃。コロナが明けて、普通の調律仕事も増え、他に待たせてしまっているお客様の仕事も平行して進めていた。
助けてくれた仲間の技術者が多くて、本当に助かった。この文章を書きながら当時を思い出すと、かなり無理をしていたと思いだし、きつい気持ちになってしまった。

次回は、ハンマー交換を書きます。

Pleyel AL 塗装作業

今回は塗装作業について書いていきます。

セラックで塗られていたので、それでいくことにした。またそうするしかなかった。
予算、作業環境、仕上がりなど考慮して、セラックを選ばざるしかなかった。
黒ラッカーも考えたが、作業中に出るシンナー臭で、近隣に迷惑になる。作業者も、工房が狭い為、恐らく中毒になっただろう。

セラックにしたのはオリジナルにこだわった部分も当然ある。
参考にしたのは、本を数書、ネット動画、
更に名古屋の職人さんに電話で質問したりして作業していった。貴重な時間を割いてくださって本当に感謝している。特に黒いセラック作りに関しては、いいヒントをくださった。

リストリーアンティーク
https://www.restoryweb.com/

セラックニスで塗装されていたが、写真のように、高音域は日焼けして、すっかり色も塗料も落ちていた。
ペンで書いたような線は、推測だが、過去に(少なくとも50年前)にオーバーホールされた時に、塗料が抜けた隙間を他の塗料で埋め、、、
周りのセラックはその後抜けていって下地が出てきて茶色になり、後から入れた他の塗料だけが、線のように残ってしまったのだと思う。

塗装 高音側板
下地をペーパーでひたすら研いで整える。

本体研ぎ1

そのあと、黒セラックでタンポ塗りを繰り返ししていく、時間を開けながら50回はやったかも。
塗装は失敗と迷いの連続だった。黒いセラックを自家製で作ったが、どうも混ざり切ってなく、塗り終わった後乾ききれない事が多く、白い曇った仕上がりになってしまったりした。
専門家に聞いたら、日本には黒セラックは無いらしく、黒とセラックを混ぜてからしばらく置いた方がいいと言われた。その通り、完璧ではないけれど、かなりましになった。

側板塗装作業

大屋根。上面の板が剥がれかけていたため、接着剤を流してはクランプしていった。恐らく内部の心材も接着剥がれを起こしていると思ったので、大屋根を立ててエポキシを流したりした。(写真にはない)

突板剥がれの補修4

 
裏面はとりわけひどく、下地をサンダーで研ぎ、そのあとカンナで平を出していった。

大屋根研ぎカンナかけ

 
夕飯を食べた後、裏面を塗って、乾いた日中は表面を塗っていった。
セラックはアルコール系の塗料だが、作業最中に酔っぱらった感じになった。フルコンは大きいと改めて感じた。

大屋根裏塗り開始

 
鍵盤蓋。オリジナルはこんな感じ。全ての外装でそうだが、予算、時間などを考え、下地を完璧に整えず、進めることにした。

外装 鍵盤蓋 内部 正面

 
プレイエルは多くの機種で、鍵盤蓋が親板と擦れてしまう。サイドをカンナやヤスリで2mmは削った。

横ずれ加工 低音

 
塗り終わって、ロゴのマスキングを剥がしていく。

マスキング剥がし

 
剥がし終えたところ。剥がしたマスキングをテーブルに貼ってみた。

マスキング剥がし後

 
前屋根の前框と当たるところはかなりボロボロだった。さすがにこれだけひどいところは、接着剤と木材、パテを使って整えてから塗った。

前屋根の破損

 
仕上げ作業は納入後にも行った。(東大先端研、ENEOSホールにて)

本体塗装仕上げ

 
定期メンテナンス時にも塗り重ねていくつもり。次回はアクション関連について書いていきます。

Pleyel AL 本体の飾りの加工

こんにちは。今回は、外装の飾りの修復についてまとめてみました。

側板の下側を縁取るように、凸部の飾りが張り付けられている。

飾りの剥がれ

本体をひっくり返してみると、過去に、剥がれてしまった形跡があり、誰かがクランプもせずに接着したのか、所々隙間がありひどい状態だった。

飾り剥がし

刃物や、アルコールやアセトンを使って、傷めないように慎重に、全て剥がしていった

何日かかったか忘れたが、剥がし終えた。

飾り剥がし後 全体

どうしても痛めてしまった箇所も多くあり、

飾り剥がし後

表面を綺麗に処理していった。

下地補正

ほとんど腐りかけているような箇所は取り除いた。

飾り加工

剥がした凸部は二枚の板を貼り合わせて作られていた。これらもいい加減に接着されていて、何の薬品を使ってもはがれなかったところは、場所によっては細いノコギリで切り込んで二枚に分けた。
すごいしんどい仕事だった。

飾り二本に分ける作業

下地を完全に整えてから、一本ずつ再び本体に接着し直した。こういうのは一度接着剤無しで試しにやってから、本番素早くやるようにしている。

飾り接着作業

切り取ってしまった箇所は、化粧板で補修した。

飾り接着後 補正

飾りパテ

最後はペーパーなどを使って仕上げていった。

飾り整形

やったことのない作業を、いきなり大きなフルコンでしている。忍耐強く作業した。ホント、きつかった。

次回は塗装について書きます。