ホルーゲル 張弦

工房では、着々とホルーゲル修復が進んでいます。

今回は張弦について書きます。

※ホルーゲルの記事で以前載せた響板塗装

も合わせてご覧ください。

響板塗装が完了し、鉄骨を本体に乗せ、鉄骨ボルトを全て締め、さあ、これから張弦だ!と行きていところですが、その前にやる事がたくさんあります。

ピンブッシュという、チューニングのトルクの保持に関わる円筒形の小さい木材を約230個、鉄骨に打ち込みます。

次に、先程打ち込んだピンブッシュに穴を開けていきます。

弦を張る前にフェルトやクロスを取り付けます。

ダンパーガイドレールも取り付けます。これも弦を張ってからでは大変です。

響板やフレームをキレイな布で拭き掃除します。弦を張ってしまうと弦が邪魔で掃除がしにくくなるので、今このやりやすい時に、やってしまいます。

いよいよ張弦です!

高音部から順に、一本一本テンポよく丁寧に張っていきます。

以前にも書きましたが、ピアノ一台に約230本ものチューニングピンを重いハンマーで打ち込むのでテンポよく集中して行います。

疲れる作業なので、ケガやミスをしないように、途中で休憩を取ります。

今回は、休憩していい事がありました。このホルーゲルは響板を抑える細い板が、奥かまちの響板部にネジ止めされていたことを忘れていたことに気が付きました。どうしよう、と戸惑いましたが、幸い高音部までしか弦を張っていなかった為、弦の下をくぐらせて取り付けることが出来ました。

全ての弦を張り、ある程度均一に弦を引っ張ったらチューニングピンの高さを打ち込み揃えていきます。上の写真にも写っている大きなハンマーで、最終的には1ミリ以下の精度まで高さを調節します。

これも、かなり神経と腕力を使うので大変です。目と肩にくる作業です。

そして、チューニングピンに巻かれた弦のコイルの全てを綺麗に整えながら、弦を弾き、音を聞いて張力あげていきます。一部だけ上げるとピアノの本体に偏った負荷がかかるので、全体をできるだけ素早く、少しずつ徐々に上げていきます。

見た目や音もダルダルだった弦は、ここまでくるとピンと張られて、ピアノらしい音になってきます。

ピッチが上がると、張弦は完了ですが、弦が新しく緩みやすい為、すぐに下がってしまいます。今回ブログには書きませんでしたが、修復前から本体のケース歪みや接着不良、更に鉄骨と本体のねじ止めの一部に問題があった為、いろいろと工夫や改造を施す必要がありました。なのでピッチが正常に安定するかずっと不安でしたが、全く問題なく作業を進めることが出来ました。

弾かれた弦から出た、張りのある、なんとも美しい音が、長かった約半年の、本体の全て作業の終わりを告げてくれているようだと、親方はしみじみ語っていました。

今後の修理は、ホルーゲルのダンパーフェルト交換、ハンマー交換に移っていきます。

by真帆

レスター 外装磨き 最終調整

レスターの修復がようやく終わり、先月末にお客様のもとへ帰っていきました。

今回は、外装磨きと音色やタッチの仕上げの作業について報告します。

外装磨きは大変でした。外装の塗料はピアノによって異なり、このレスターは、今ではほとんど使われなくなった、カシューが使用されていました。漆の代用として使われている合成樹脂塗料で、カシューナッツの殻から絞り出した油が原料になっています。

いつもより、曇りのある塗装面をバフで磨いていくと、他の塗料とは違い、汚れと磨き剤が塗面の上で混ざってさらに曇り、焦ってしまいとても大変な思いをしました。しかし、バフを更に根気よく、慎重にかけていくと、くすみが段々と取れていき、まるで曇りが晴れるように、綺麗な黒い鏡面のような艶が現れてきました。お肌に例えるならば、古い角質がボロボロと落ちて、輝く美しい肌になるような感じです。

鍵盤蓋のロゴのところも綺麗に磨きました。

ロゴの部分はかなり茶色く錆びていましたが、錆び落としとコンパウンドを使って、手磨きで綺麗に落ちました。

その他に、蝶番、蝶番ネジ、ペダルなどの金属部品も磨きました。ちゃんと磨けばピカッと光るので、綺麗になると嬉しくなります。

大変だった外装が終わり、仕上げの調律、調整、整音をしました。

音の出方、音の粒、タッチも揃っていき音に厚みが出ました。

修復前に感じた、暖かいピアノの音も残りつつ、フレッシュな新しいピアノの音を感じる仕上がりになりました。

これからお客様宅で弾いてもらうと、更に違った音の表情も出てくると思います。そんなところも含めて、今後も末永く楽しくつきあっていただけたらいいなと思いながら、帰っていくレスターを見送りました。

by真帆