レスターの修復がようやく終わり、先月末にお客様のもとへ帰っていきました。
今回は、外装磨きと音色やタッチの仕上げの作業について報告します。
外装磨きは大変でした。外装の塗料はピアノによって異なり、このレスターは、今ではほとんど使われなくなった、カシューが使用されていました。漆の代用として使われている合成樹脂塗料で、カシューナッツの殻から絞り出した油が原料になっています。
いつもより、曇りのある塗装面をバフで磨いていくと、他の塗料とは違い、汚れと磨き剤が塗面の上で混ざってさらに曇り、焦ってしまいとても大変な思いをしました。しかし、バフを更に根気よく、慎重にかけていくと、くすみが段々と取れていき、まるで曇りが晴れるように、綺麗な黒い鏡面のような艶が現れてきました。お肌に例えるならば、古い角質がボロボロと落ちて、輝く美しい肌になるような感じです。
鍵盤蓋のロゴのところも綺麗に磨きました。
ロゴの部分はかなり茶色く錆びていましたが、錆び落としとコンパウンドを使って、手磨きで綺麗に落ちました。
その他に、蝶番、蝶番ネジ、ペダルなどの金属部品も磨きました。ちゃんと磨けばピカッと光るので、綺麗になると嬉しくなります。
大変だった外装が終わり、仕上げの調律、調整、整音をしました。
音の出方、音の粒、タッチも揃っていき音に厚みが出ました。
修復前に感じた、暖かいピアノの音も残りつつ、フレッシュな新しいピアノの音を感じる仕上がりになりました。
これからお客様宅で弾いてもらうと、更に違った音の表情も出てくると思います。そんなところも含めて、今後も末永く楽しくつきあっていただけたらいいなと思いながら、帰っていくレスターを見送りました。
by真帆
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