ホルーゲル ハンマー第一整音

工房では、ホルーゲルのハンマーの第一整音(下刺しとファイリング)をしました。

第一整音(下差しとファイリング)は、ピアノの発声を良くするために重要な作業の一つです。
ハンマーフェルトは、フェルトで出来ているとはいえ、フワフワな状態ではありません。

堅く作られたフェルトの塊は強い圧力によってハンマーウッドに接着されています。

発声を良くするために、最適な弾力を作らなくてはなりません。新しいハンマーは、メーカーや種類にもよりますが、堅い場合がほとんどす。

ハンマーは弦を打つ部品なので、第一整音(下刺しとファイリング)は音にダイレクトに影響します。
特に音のダイナミックレンジを広げます。
因みに音が硬い、柔らかいなど、イントネーションや音色を整えるのは第二整音以降で詰めます。

本来、整音作業は音作りの作業のため、全ての部品が揃い、調律と整調が終わってから行うのが望ましいですが、全てついた状態での下刺し作業は困難という事と、フェルトの表面をむく必要があるので、親方の経験から針刺しの回数や長さ、フェルトのむく量について指示、助言をもらいながら作業を進めました。

下刺し

刺す回数を数えながら、針の角度、長さ、刺す所に注意して刺していきます。
間違えて刺しすぎたり、ハンマーの先端に近いところを刺すと柔らかすぎる音になってしまうので、後が大変です。
刺す回数がわからなくならないように、ぶつぶつ数えながら作業しました。

因みに、ハンマーの先端に近いところは、音を聴いてから刺していくので、この段階ではやりません。

ハンマーファイリング

新しいハンマーは、製造時ハンマーの切り口がそのまま残り、ミミが付いている状態です。


なので、そのミミを削りながら形を整形していきます。

左→加工前

右→加工後

ハンマーの打弦する面が斜めに削れていないかに気を付けて行いました。

第一整音は緊張する作業で、長い間集中して行わなければならないので、休憩を取りながら行いました。
次はハンマーを植えていきます。

by真帆

ホルーゲル アクション修理①

本体の掃除も終わり、アクション修理に入りました。

まずはアクションの掃除からです。

掃除機で大まかにゴミを吸い取ってから、コンプレッサーで隙間に溜まったゴミを吹き出します。

その後、濡れ雑巾でレールや金色のブラケットの部分を拭いていきます。

ここは普段は掃除しないところなので、雑巾が真っ黒になりました。

さて、掃除が終わり、アクション修理に入ります。

ブライドルテープ交換

テープをかけているワイヤーから外す時に、赤い皮のチップとテープがちぎれてしまうほど劣化していたので、交換しました。

テープもチップも綺麗になりました。

ハンマー交換の準備

ハンマーはスティックが多かったので、フレンジ交換をしました。

ハンマーを交換する前に、この新しいフレンジでハンマーが正常に弦に向かってまっすぐ動くようにアクションに取り付けて、調整します。

その後、ハンマーをアクションから外し、ハンマーを外していきます。

この部分は、膠で接着されているので、熱を加えて外します。焦がさないように、ヒートガンの火力を弱めにして、外していきます。

綺麗に外れました。

来週もハンマー交換を進めていきます。

by真帆

ホルーゲル アップライト修復開始

工房では、先週まではGPのホルーゲルを修復していましたが、今週からは、UPのホルーゲルの修復に入りました。

木目のきれいな、緩やかな曲線が美しいデザインのピアノです。

修復に入る前に、ピアノの試弾をして、どのようなピアノか、ピアノがどういう状態かを把握します。

弾いてみると、包み込まれるような音の広がりと、深みのある音色を感じました。ただ鍵盤が軽快に動かず弾きにくく、つっかえてしまったり、音が出なかったりして、スムーズに演奏することは困難でした。

修復後に弾いてみるのが楽しみです。

さて、早速作業開始です。

まずは、ピアノの裏側の掃除から始めていきます。

響板以外の所は白く塗られていましたが、くろずんでいましたが、

汚れを拭き取ると、とてもきれいな白と木目が出てきました。見えない部分なのにお洒落ですね。

作業中、底を拭こうと手を入れたら、音が豊かに響くように、響板面積を広くとる工夫が打廻しにされていました。このピアノは、丁寧に作られたことを感じました。

続いて、ピアノを寝かせて内側の掃除です。

チューニングピンと弦、フレーム、響板を掃除していきます。

錆が落ちると光を反射して光ってきます。

フレームと響板を拭いていきます。弦が張ってある所も隙間から布とピンッセットを入れ、根気よく拭いていきます。

キレイになったところを眺めるのは掃除の醍醐味ですね!

本体の掃除は完了しました。

これから、アクション修理に取り掛かります。

by真帆

ホルーゲル 外装磨き 最終調整

工房では、ホルーゲルの最終仕上げを行いました。

まずは、外装磨きをしました。

ホコリや汚れがある状態なので、雑巾で拭き取っていきます。

ここで、しっかりゴミ、ホコリを落とさないと、磨き傷がつく原因になります。

コンパウンドとバフを使って磨いていきます。

このピアノの塗装はラッカー塗装でした。

ラッカーは黒色が深く、ハッキリした黒に見えます。艶のある美しい黒に仕上がりました。

さて、金属部分も磨きました。

錆びてはいましたが、こちらも磨けば輝きを取り戻します。

全ての磨きが終わり、パーツの組み立てをして、ピアノを組んでみて、現状を確認しました。

外装に使われているフェルトは変色し、本体の保護や雑音防止に使われているゴムも劣化してボロボロでした。新しいものに交換し、綺麗になりました。

本体の最終的な仕上げを親方に確認してもらいながら進めて行きました。古いピアノなので、経年変化で歪んでいるところがたくさんありました。譜面台が前後にスライドしずらくなっていたり、鍵盤蓋も左右均等に開閉できなかったりしました。可能な限り補正していきました。

アクション修理後の調整は親方がしていました。本体同様、修理後に組み立てて調整してみると、木の歪みで鍵盤同士が後ろで擦れていたり、こちらもしていました。それらを全てクリアにした後、最終調整をしていました。

調整する前の音は、本体がよく鳴るピアノなので、音は大きく、良く広がる音でした。

調整した後は、広がる音が凝縮されて、まとまり、音色が濃くなりました。

ここまで違いを感じたのは初めてで、驚きました。良いピアノほど調律、整調、整音でピアノが変わるそうです。

ホルーゲルの出荷前の様子です。

(窓越しからの撮影のため、iPhoneが写り込んでしまいました)

7ヶ月という長期間に渡る修復でした。

工房に来た時は音は出るものの、なかなか演奏をするには大変なピアノでした。

そこから、演奏が可能になり、大きく包み込むような音はそのままに、深みが増しました。ここからまた、新たなスタートを切るのかとこのピアノのこれからに思いを馳せました。

「音楽準備室」というお店に搬入されました。

これから、色々な形で、たくさんの人に弾いて貰えると思うと嬉しいです。

尚、ピアノは出荷されましたが、全ての作業か終わったわけではありません。

特注で頼んである部品が、まだ出来上がっていないので、古い部品がまだついています。

部品が届き次第、新しいものに変えます。

また、後日お伝えします。

そして、隣に写っているアップライトピアノもホルーゲルです。こちらもなかなか良い音です。これから修理に入ります!

by真帆