ホルーゲル 鍵盤修理

工房では、昭和12年製ホルーゲルピアノの修理を進めています。

鍵盤のバランスピンの交換を行いました。

バランスピン 交換前

バランスピンが錆びてしまい、表面がヤスリのようになっています。サビに引っかかって鍵盤が抜けにくくなっている箇所もありました。

サビを落とし、磨くと細くなってしまい、鍵盤ホールガタの原因になります。

なので、古いバランスピンを抜いて新しいバランスピンに交換していきます。

バランスピン 打ち込み途中
バランスピン 打ち込み
フロントピンはバランスピンほどサビはなく、交換せずにきれいに磨きました。

磨く前
フロントピン 磨き前2
磨いた後
フロントピン 磨き後

ブッシングクロスは経年劣化により、すり減った部分と虫食いにあった部分がありました。

バランスブッシングクロス 交換前
bブッシングクロス 古

フロントブッシングクロス 交換前
fブッシングクロス 古

バランス、フロントブッシングクロスを張り替えます。

このピアノは製造されてから82年経過しているため、オリジナルと同じ厚さのクロスと交換していいとは限りません。
今回は、ブッシングの厚さを決めるサンプルを高音、中音、低音部のように、セクションごとに試しました。

フロント、バランス共に、1.1を試しに張ったところ、ガタになりました。

ブッシングの厚さを決めるときは、工具で調整してガタやスティックにならない丁度良い厚さをねらいます。

結果的に、どのセクションもバランス、フロント共にクロスの厚さは1.2になりました。

バランスブッシングクロスの貼り付け
bブッシングクロス 貼り付け

バランスブッシングクロス 交換後
bブッシングクロス 交換後

フロントブッシングクロス 交換後
fブッシングクロス 交換後

これからブッシングを調整していきます。

キーピン 交換後

by真帆

ホルーゲル 象牙鍵盤漂白

工房では、昭和12年製ホルーゲルピアノの修理を進めています。

象牙鍵盤は経年変化や手の汗などで黄ばみが出てきます。
特に中音から次高音にかけては、良く弾かれる音域なので目立ちます。

象1

現在では、新品の象牙は手に入らず、新品の象牙とは交換することが出来ません。
今回は、象牙を漂白して黄ばみを出来るだけ落としていきます。

快晴のお天気の日が漂白日和です。

障子紙を鍵盤を並べた上にかぶせて、その上に過酸化水素水(オキシドール)を塗って、日に当てるという作業を数回繰り返します。

象 漂白中

色が白に近づいてきました。真っ白というよりは、クリーム色になりました。

象 漂白後

漂白作業中に象牙が剥がれてきました。熱と水分で象牙が剥がれるほうに反ってしまいました。
なので、アイロンと湿らせた布で蒸気をあてて接着しました。

(写真では、奥側が固定して接着している様子手前は剥がれている様子)
象 剥がれ 

最後に、鍵盤の黄ばみの面影が少し残る中音部分を中心にペーパーで研いでいきます。
ペーパーは400、600、800、1000番という順に番手を上げて研いでいきました。

象 加工後

象牙鍵盤はとてもデリケートな素材で、扱いもその分難しいです。
熱と水分で形が曲がりますし、研いでいると柔らかく、削れやすい部分もあります。
だから人の指には優しく、そしてなじむと感じました。
手作業をしていると、いろいろな発見があって面白いです。

by真帆

ホルーゲル アクション修理

工房では、ホルーゲルピアノのアクション修理を進めました。

昭和12年製なので、アクションの摩耗や破損、汚れ、などが進んでいるため交換する部品がたくさんあります。

ブライドルテープはテープが破損していたので、新しいテープとチップに交換です。

交換前のブライドルテープ
ブライドルテープ 古

交換後のブライドルテープ

ブライドルテープ 新

ハンマーはスティックの傾向があり、バットフレンジのセンターピン交換をしました。
センターピンが黒く汚れていました。この汚れが、ハンマーの動きを悪くしていた原因の一つでした。

センターピン交換前

センターピンとフレンジ(木部)の間に薄い赤色のブッシングクロスがあり、そのクロスとセンターピンの硬さをリーマーで一つ一つ調整しながら、88個全てセンターピンを交換していきます。

センターピン交換

ハンマーのファイリングを行いました。
ハンマーは弦の打弦により、形が変形してしまうので、フェルトを削って形を整えます。
ハンマーフェルトは虫食いもありましたが、ファイリングにより表面がキレイになりました。

今まで、ファイリングをしてきましたが、羊の毛並みの触感を感じたのは初めてで驚きました。
ハンマーは羊の毛を圧縮したてできたフェルトだという事を実体験で感じました。

ファイリング

手作業をしていると、色々気付くことがあって面白いです。

ハンマー、バットの修理が終わり、次は鍵盤修理に入ります。

by真帆

YAMAHA U3G 弦交換

工房では、ヤマハU3Gの弦交換と鍵盤修理を行いました。

このピアノは、火災による消火活動により、ピアノ内部が濡れてしまいました。
その影響で、金属部分の弦やチューニングピンがサビてしまいました。

弦交換 前

この状態を放置してしまうと、サビが進行します。ピンを外した後、ピン板が濡れていないか確認し、しばらくの間乾かしました。
新しいメッキピンと弦が光を反射します。
ピンの保持もしっかりしています。

新 張弦後

キーブッシングクロスの交換をしました。

鍵盤の横方向にガタになっていました。
これは、鍵盤を弾きこんだことにより、クロスとキーピンの間で摩耗が進んだ結果です。

ブッシング 古

新しいブッシングを張り付けて治具で固定して乾かしています。

ブッシング 貼り

新しいクロスは、張り替えたままだとキーピンとの隙間が無く、スティックの状態です。
クロスとキーピンの間をスティックにならず、ガタにもならないように、クロスを潰して調整します。

ブッシング 新

白鍵上面にヒビが見られたため、交換します。

ヒビ鍵盤 

新しい鍵盤に変わり、綺麗になりました。

鍵盤 新

弦交換から鍵盤修理が終わり、修理が進むにつれ、新しく綺麗になっていきます。

修理が終盤になり、調整の作業に入っていきます。

by真帆

ホルーゲル アクション(バット)修理①

工房では、ホルーゲルピアノのアクション修理を行いました。

今回は、バットの修理についてです。

バットという部分に付いている、赤いフェルトや白いクロスが、虫食いにより穴が空いていたり、片減りしていたので交換をしました。

バットの木部の上に、赤いフェルト、白いクロスがそれぞれ並んで貼ってあり、その上に黄色い革が被さるように貼ってあります。

赤いフェルトが一番人気でたくさん食べられていました。革は全て使える状態で残っていました。

バットスキンとフェルト、クロスの状態によって、ピアノのタッチに影響が出るデリケートな部分なので、質感を揃えるようにバットクロスを貼り直していきます。

クロス、フェルトを貼り替えただけでも、見違えるようです。

次回はバットスプリング交換、ハンマーファイリングです。

by真帆

:追記

部品同士が接している箇所には、フェルト、クロスやスキンが使われています。

今回のホルーゲルピアノは、昭和12年製造と、消耗している部分が多く、虫食いもみられます。今回の修理では、全てを交換するのではなく、出来るだけオリジナルの部品を残せるところは活かしながら、一つ一つ交換していきました。