ピアノ修理工房を訪問。

今週は比較的涼しい日が続きました。
猛烈な暑さも少し小休止です。束の間ですが有り難いです。

今週はピアノ作業も小休止。
先日は神奈川県横浜市にあるピアノ修理工房、クラビアハウスさんを訪問しました。
クラビアハウスさんには津波被害のピアノの修復の際、工房を訪ねてくださり貴重なアドバイスや経験談をお話ししていただき大変お世話になりました。
その時の様子はこちら→ 津波ピアノ修復、クラビアハウスさん

今回はフランスでジャズピアニスト&ピアノ調律師として活躍されている後藤理子さんにお誘いいただきました。
偶然にもクラビアハウスの松木さんと後藤理子さんはパリでお知り合いになったとのことで、その縁で今回の訪問に至りました。

住宅地の中で可愛らしい建物にまず目を引かれました。
ヨーロッパの雰囲気漂う外観です。

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工房内も素敵なインテリアに囲まれていました。
飾りつけなどは社長の松木さんがされているそうで、とても可愛らしいです。

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そして松木さんがヨーロッパまで行き選んできたピアノが多くありました。

象嵌(ぞうがん)の装飾が美しいベヒシュタイン
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奥がグロトリアン 手前がニューヨークスタインウェイ
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弦とピン板がついたままの珍しい鉄骨の姿

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ピアノも弾かせていただきましたが、メーカーや製造された年代、内部の構造も違うのでそれぞれピアノが持つ個性をはっきり感じることができました。

たくさんのピアノを前に技術談義にも花が咲き、あっという間に時間が過ぎていきました。

松木さん、スタッフの皆さんありがとうございました!

by志乃

YAMAHA U5 鍵盤修理

暑い日が続いていますね。
夏休みに入ったお子さんたちが、太陽の下で元気に遊んでいました。
お祭りに花火大会・・夏のイベントが目白押しの季節です。

工房は今、YAMAHA アップライト モデルU5の修理です。
U5の修理を共同で行っている調律師の早川さんが鍵盤修理をしています。

鍵盤にはバランスホールという箇所があります。
文字通り穴が開いていて、その穴にはバランスピンが入っています。

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バランスホールは弾いたときの支点となる所で、タッチにも影響がありとても重要です。
バランスホールとバランスピンの関係は、固くも緩く(ガタ)もなく、抵抗がないのが理想です。

今回の鍵盤のバランスホールは、長年の使用により穴がタテに広がってしまい、ガタになっていました。
穴の形を修正するため、埋め木をして一本一本修理していきます。

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左が修理前・右が修理後のバランスホール
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埋め木をしたら、形を整えてバランスピンとの合わせを調整します。
根気と集中力を要する作業です。
ベテランの手さばきが光っていました。

by 志乃

エラールの一日。

連日真夏日が続いています。
九州に続き関東も梅雨開け間近のようです。

先日エラールピアノの調律をしに、都内のお客様宅へ伺いました。
この日は偶然にも二台のエラールピアノのご依頼でした。
工房のスタッフ2人がそれぞれのお客様宅へ伺ったのですが、
どちらもエラールピアノなのは珍しいことです。

エラールピアノについて少しご紹介します。
エラールピアノはフランスを代表するピアノメーカーの一つです。
創業者のセバスティアン・エラールが1777年パリで工房を設立しました。
エラールはメカニックに強く、設計や構造の改良を重ねながら
ピアノのレベルを引き上げていきました。
ピアノにおいて様々な発明をして、多くの特許を取りました。
その中でも打鍵の連打を早く正確にできる「ダブルエスケープメント」というアクションの仕組みは、現代のグランドピアノの基礎となっています。

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音色は中高音は澄んでいて、低音はコントラバスのようでオーケストラの響きをも思わせます。

エラールピアノはベートーヴェンやリストなど歴史上の大作曲家にも多大な影響を与えました。

午前中伺ったお客様のエラールピアノは1911年の平行弦で、
午後のお客様のは推定1905年の交差弦のエラールです。
(平行弦は弦がすべて平行に張られています。現在のピアノはほとんどが交差弦で、低音弦が交差しています。)

このピアノを購入したI様はグランドピアノを探していた時、楽器店で
偶然エラールピアノと出会い、とても魅力を感じて購入に至りました。

この日は納入調律で、工房スタッフ全員もご招待していただき、エラールピアノを見学しに行きました。
美しいフォルムと珍しい6本脚のスタイルが目を惹かれます。

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譜面台の裏にも名前のサインらしきものが。
当時の職人さんの息吹を感じます。

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ピアノの大きさはそれほど大きくないですが、ピアノ全体から音が湧き出るような印象がありました。
演奏していても重厚な音色に包まれるような感覚です。
I様も弾くほどにピアノと共鳴していき、電子ピアノからエラールピアノに変わり演奏することがとても楽しいとおっしゃっていました。

今回、平行弦と交差弦のエラールを一日で見る機会を得ることができました。
しかも製造された年代も近く、それぞれの魅力を知りました。
平行弦は一音一音が独立していてクリアに聴こえ、交差弦は音が響きあい幻想的な音色でした。

2台とも美しい音色を奏でていました。

どちらのお客様もエラールピアノを楽しんで弾いていただけると嬉しいです。

by 志乃

東海ピアノ WALDSTEIN 修理開始

7月に入りました。
蒸し暑い日が続いています。

工房に修理をする新たなピアノが入りました。
東海楽器株式会社が製造したアップライトピアノのWALDSTEIN モデル 120W です。

外装はマホガニー色(赤茶色)で、猫脚が可愛らしいピアノです。

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東海楽器株式会社は、1947年に河合楽器の出身の技術者たちが集まり、
ピアノを作ることを目的としてスタートしました。ところが当時は終戦直後で資材がなく、ピアノ製作の夢が果たせませんでした。
ピアノ以外の楽器では鉄琴をはじめとして、ハーモニカ、ギター、チェンバロなどを製造していました。
当初の目的であったピアノ製作を開始できたのは31年後の1978年1月でした。
東海ピアノはドイツのピアノメーカーであるシンメル社の楽器をモデルとして製作され、アップライト、グランド共にできる限り小型につくられています。
これらのピアノは88鍵でありながら、音質を犠牲にせずに可能な限り小型化することに成功したもので、欧米のピアノに類似した長所を備えています。
(「楽器の辞典」より抜粋)

工房の東海ピアノからもそれらの意図を感じられます。

修理作業の前に、いつものように演奏をしてピアノの音やタッチを確かめます。
修理前の状態をきちんと把握しておくことで、修理後と比較することができます。

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修理後に演奏するのが今から楽しみです!

by 志乃

KAWAI KU2 外装磨き

雨の日が続いています。梅雨が明けるといよいよ夏本番ですね。

KAWAI アップライト モデルKU2の修理の続きです。
外装磨きに入りました。

KU2の外装は本来だと鏡のようにきれいなのですが、
長い年月が経ち曇りが塗面全体に出てしまっていました。

本体やそれぞれのパーツをバフで丁寧に磨いていきます。
けっこう体力を使います。

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磨くたびに艶が蘇っていくのがわかり楽しいです。

ピアノの衣装を揃えるといった感じでしょうか。

また、ペダルなどの真鍮(しんちゅう)部分も錆びが出て汚れていたので
きれいに磨きました。

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外装みがき、進行中です。

by志乃