YAMAHA G3〜こだわりの修理⑤

工房では、ヤマハG3のブッシングクロスの交換とバランスピンの交換をしました。

まずは、筬の掃除をして、バランスピンの交換です。

バランスピンの植えられている根本は錆びやすく、錆びを取ろうと磨くと、どんどん細くなります。
鍵盤のホールより細くなり、鍵盤を筬に入れると、最後にスッと急に抵抗なく落ちてしまいます。

筬から抜いたバランスピン

バランスピンが抜き終わった状態の筬

新しいピンを打ち込んで行きます。

鍵盤を収めて確認したところ、交換前のように鍵盤が急にスッと落ちることはなくなりました。
ホールのばらつきがあるので、鍵盤が落ちる速さもバラバラです。なので、鍵盤修理の最後に鍵盤調整を行います。

バランスピンの交換が終わり、キーブッシングクロスの交換をしました。

鍵盤の掃除をして、古いブッシングクロスを剥がしていきます。

剥がし残しがないように綺麗にしてから、新しいクロスを貼っていきます。

接着剤は、このブログではお馴染みのニカワを使っています。

ニカワは温度によって状態が変わってしまうため、扱いが難しいですが、しっかり接着され、乾くのも早いです。しかも剥がす時は蒸気を当てれば綺麗にはがせる機能性の高い接着剤です。

新しいクロスを一鍵につき、バランスとフロントの二ヶ所に丁寧に貼っていきます。

バランスブッシングクロスの接着

フロントブッシングクロスの接着

キーブッシングクロスの交換は完了です。

これで、ヤマハG3の修理は一旦お休みで、次回からヤマハC3Aの修理に入ります。

by真帆

現地出張 グランドピアノ修復

今回は、いつもお世話になっている技術者の方の依頼で、明治神宮前駅から徒歩5分のSDA東京中央教会にある、YAMAHA G5の修復作業を行なってきました。

礼拝堂に入ると、とても明るく、外の喧騒からは想像できないほど静かな場所で、正面には立派なステンドグラスとパイプオルガンがありました。

さて、グランドピアノの修復内容は、古くなった弦の交換と弦溝のついたハンマーのファイリング、アクションの調整です。

ピアノが傷つかないように、新聞紙で養生し、ピアノに負担をかけないように、弦の張力を少しずつ緩めていきます。

脱弦した後は、チューニングピンとピンブッシュを抜き取ります。

チューニングピンとブッシュを抜く作業と並行して、フレームと響板の掃除をしました。

新しいピンブッシュを打ち込み、ピンを打ち込むために穴を開けていきます。

新しいチューニングピンと弦を張っていきます。
今回はチューニングピンにディアマント、弦は芯線がレスロー、巻線はヒロエピアノハウスさんに巻いてもらったものを使いました。
約230本のチューニングピンと弦を張るので体力と集中力を使う作業です。

礼拝堂にピンを打ち込む音が響き渡ります。
張弦中に耳栓は必須アイテムです。

高音から低音まで弦を張り終え、ピッチを上げていきます。

ハンマーのファイリングをしました。
古い弦溝を取りました。

金属部分の磨きもしました。

真鍮のバランスピンは汚れがとれて、手触りも良くなりました。

蝶番、ネジも綺麗に磨きました。
外装は傷が少なかったので、汚れをふき取りユニコンで磨くときれいになしました。

最後は本体に外装を取り付けて、組み立てていきます。
ピアノの音を出してみると、修復前よりも音の立ち上がりが良く、はっきり明るい音になりました。
修復後の写真を撮り忘れてしまい、載せることが出来ず残念です。

これからも、このピアノを大切に、沢山演奏してもらいたいです。

by真帆

YAMAHA G2 アクション・鍵盤修理

雨の日がしばらく続きましたが、関東は今日は気持ちの良い秋晴れです。外に出ると空気が清々しく、日向ぼっこしたい陽気です。今日がチャンスと、朝はみんなで工房のプチ大掃除を行いました!

工房では、YAMAHA、モデルG2のアクションと鍵盤の修理をしました。
こちらのピアノは、ただいま修理中のホルーゲルを持っていらした方が所有していました。2台のグランドピアノは知人のM様に引き継がれて、来月頃オープンする飲食店に設置される予定です。
G2のピアノは、本体の状態は問題なかったので、アクションだけ引き取り工房で修理を行うことになりました。

アクション部品の修理では、ハンマーファイリング(ハンマー整形)とハンマーシャンクローラー交換を行いました。
ハンマーフェルトはハンマー交換をするほどの状態ではありませんでしたが、フェルトに弦の跡がしっかり付いていたので、ヤスリで弦の跡を削り全体の形も整えました。
ファイリングをすることで、音色がより豊かに響くようになります。

削ってフェルトの汚れも落ち、見た目がキレイになりました。
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ハンマーシャンクローラーは、ハンマーが弦を打つ時のアクション運動においてとても重要な部品です。鍵盤を押す度に他の部品と当たる為、元々付いていたローラーは激しく摩耗していました。タッチに影響が出るため、ローラーごと新しく交換です。

交換前。かなり摩耗していて、触るとデコボコしていました。
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新しいローラーに接着剤を付け、かなづちで叩いてはめ込みます。
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交換後。スムーズに弾きやすくなると思います。
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鍵盤は白鍵の木口(こぐち)と呼ばれる正面の部分が劣化で変色してしまったので、木口のみ交換しました。交換した木口は真っ白でピカピカ!交換前と比べるとパッと見た時の印象が全然違います。

交換前。機能には問題ないのですが、見た目が良くないです。
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交換後。白くつやつやしています。
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また、鍵盤のブッシングクロスという赤いクロスが摩耗していたので貼り換えました。このクロスは鍵盤の裏側に付いています。クロスが摩耗していると、弾いたときに鍵盤がブレてとても弾きづらいです。

接着剤はニカワを使いました。写真は貼り替え中の作業風景です。
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そして鍵盤が収まるバランスピン、フロントピンは1本1本丁寧に磨きました。

右が磨き前、左が磨き後。かなり黒ずんでいてサビついていました。根気のいる作業ですが、鍵盤のスムーズな動きに関わるのでこのピンはツルツルの状態がベストです。
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すべての修理が終わりました!

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今回の修理はどれも結果的に音色とタッチに大きく影響する修理なので、本体に設置して弾いた時の変化が楽しみです!

by志乃

YAMAHA C5 お客様の元へ

先週あたりから、外の空気が少し柔らかくなり始めて気分もほっとしています。あんなに聞こえていたセミの大合唱は、いつの間に無くなり、季節の移ろいを感じますね。

工房では、YAMAHA、モデルC5がお客様の元へ戻っていきました。

出庫前のピアノ
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弦の交換後、ハンマー交換等の修理を終えて、整調・調律・整音作業をしていきました。整調作業では、弾きやすいタッチになるように様々な工程を行います。このピアノを長年調律されていて、今回の修理をご依頼してくださった調律師のYさんに最終の整調作業をしていただきました。整調がどんどん整ってタッチが弾きやすくなると、それに伴いしっかりハンマーが弦を叩き、芯のある音になっていきます。
整調・調律と進み、整音作業では音色の粒を揃え、1音1音がより豊かに鳴るように微調整をします。音を聴く、作業する、を繰り返すごとに音色の変化を感じます。

音色を確認
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針刺しの風景
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整音までの工程が終わったピアノは明るく軽やかな音色はそのままに、更に高級感漂う音色になりました!中音・高音のザラっとした音も無くなり、メロディーラインの響きはふくよかに歌っているようです。今回の修理で長年使用されていたピアノがリフレッシュして、また末永くお客様に愛されるピアノになったと思います。

本体内部も掃除や磨きをしたので、ピカピカになりました!
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戻ってきたピアノに対してお客様は、「おかえりなさい!」という気持ちになられたそうで、そう思って頂けたのはとても嬉しいです。ピアノはこれからもたくさんの歌声を響かせてくれることでしょう。

by志乃