Feurich UP 駒トップの交換 その①

響板の修理をする前に、駒上面の交換作業をしていきます。

まずは駒ピン抜き。今のよりもやや細めで鉄ピン。太さを測定。

駒ピン抜き 1

上面の測定と、駒削ぎをコピー。

駒上面の測定 2

 

駒上面の削り出し

低音駒は駒のトップが接着剥がれを起こしていたので簡単に剥がれた。

駒トップ剥がし 3

 

高音から中音の終わりにかけてはカンナを使った。

駒トップ削り 4

 

ピン穴を同じぶな材で埋める。

駒ピン埋木 5

 

駒のトップの材料は、カエデ材。駒の下地とカエデ材を合わせてから接着。この作業が大変難しい。

駒上面接着準備

こうして写真を載せて文章を書くと、ほんと難しさが伝わらない。

そして刃物の質と砥ぎが、これからの作業の質に関わっていることは忘れてはいけない。

Feurich UP 解体と側板の接着

掃除を終えた後は、解体していきます。
今回は響板や駒の修理もしなくてはならないので、棚板を外します。

低音弦のヒッチピン側の処理が、いつも見るそれとは違う。よく見ると2重に巻かれている。これはフランスのピアノをやる時によく見る。しっかり固定されていて、外すのが大変だった。

脱弦 低音弦
ループ弦がない、全て一本弦。意外と時間が掛かった。

脱弦作業
外している最中、低音駒がクラクラしてた。手で簡単に取れてしまった。

低音駒 トップの割れ
鉄骨を上げる。事前にアクションボルトを外しておいた。もちろん寸法を測定した後に。鉄骨が水平にうまく持ち上がるように、スリングベルトの位置や長さを丁寧に調整してから実施。

鉄骨上げ作業
鉄骨を戻す時用に、スリングベルトの位置を撮影。3本のベルトが正三角形に近いほどいい。

鉄骨上げ スリングの位置

鉄骨を上げてから、上面の掃除。ついでに割れなども確認。

鉄骨上げ後 掃除

 

高音側の側板が剥がれかけている。低音側の側板や天屋根はしっかりついている。温湿度変化がかなりひどかった箇所と判断し、
完全に剥がさず、可能な限り接着剤を流し、クランプでとめた。

側板の剥がれ

側の接着 クランプ
垂れてくる接着剤をまめにふき取りながら作業した。念のため3日間おいた。無事に接着していた。

側の接着作業 2

次回は駒の上面の交換について書きます。

 

Feurich アップライト 1923年製

今年もよろしくお願いします。

現在工房では、Feurich(フォイリッヒ)のアップライトピアノの修復作業をしています。

お付き合いのある技術者様から、紹介していただいた方のご両親が所有しているフォイリッヒ。
響板修理を含めたオーバーホール作業をし、音とタッチも復活させ、次の所有者の元へ行く予定。

正面

斜め

後ろ
側板が剥がれかかっている。他にも接着剥がれの箇所が多く、大掛かりになりそうな予感。

側板の剥がれ

まずは掃除から。

背面の掃除

底板は、リムや鉄骨と触れないように設置されている。音響に直接かかわる箇所とは接さないような造り。

底板

パネルを外し、弦の測定をほぼ終えた。

パネル外し後
次回は脱弦以降を書いていきます。

 

YAMAHA 2型 鍵盤修理~納品まで

今回は、鍵盤修理です。
今回も、写真は大変少ないです。

白鍵盤が無い状態。恐らく象牙を、業者が取ったのだと思う。

鍵盤

木部の下地処理をしっかりやった後に、鍵盤上面を接着。
余分な個所をヤスリで削って整えていった。

鍵盤加工

その後、全てのパーツを組み立て、外装を磨いた。

外装は傷も多く、くすんでいたが、お客様の感性を考え、塗装はそのままで、磨いて仕上げることにした。
塗料はカシューで、えらい大変だったが、それなりの風合いに仕上げられた。

外装作業と同時に、調整をしていった。
いいタッチを出すのに苦労しなかった。
調律もしやすく、整音もしやすく、これまでの作業の大変さに比べたら、仕上げが非常に楽だった。
ヤマハと同じ日本人だからなのか、大変いいタッチ、いい音、いいバランスで、馴染みやすく、いろいろな曲を楽しみたい楽器になった。

完成 工房

このピアノは我々以外誰にも触れることは無かった。お客様も興味のある人に弾いてもらってくださいと仰ってくださったが、残念ながら日程的に難しく、7月に出ていった。

別の日、お客様宅へ伺うと、すっかりそこの住人になっていた。いつもの事だけど。お客様宅
その後、4か月がたつが、お客様は大変気に入ってくださったご様子。時よりメールでピアノの変化などの感想を教えてくれる。

今回の仕事は、古くてきちんと作られている国産のアップライトピアノを、いい音いいタッチになるよう、改造は一切施さず、きちんと直してお売りするというもの。
実はこのような仕事は非常に少ない。なぜなら高価になり、販売しずらくなると考えてしまうからだと思う。
お客様は恐らく、ブランドなどにあまり偏見が無く、ご自身の感覚で好きなものを選ぶことが出来る方なのだと思う。今回このような仕事をさせていただき、いろいろと学ぶことが出来た。お客様には大変感謝している。
また、大正末期から昭和初期の世相や、産業革命から現在までの、物づくりの変遷などを改めて想像してみるいい機会にもなった。

今回も大変な仕事だった。でもこれから時代が進めば、物は古くなるのだから、もっといろいろあると思う。

YAMAHA 2型 アクション修理

アクション修理について書きます。
写真撮り忘れだらけなので、言葉で補います。

今回も全て外し、センターレールの確認からです。ネジバカは直しました。
アクション作業風景

このヤマハ、ウィペンヒールクロスが無く、鍵盤のキャプスタン上面にクロスが貼ってあるタイプ。日本、アメリカ、フランスのでよく見るけど、ドイツのでは見たことが無い。

ウィペン

ウィペンフレンジの接着の確認。
一つとれていたのがあったので、全て外して付け直した。

ジャック外し

ジャックフレンジ接着

バットスプリングの交換。今のバットよりも寸法が小さく、交換不能な為、加工した。

バット加工

バット加工②

左が交換前。コードもスプリングのかなり細い。
このピアノは、ネジが少なかったり、木材が小さめだったり、支柱がこの時代のピアノの割に細かったりと、何かにつけて材料少な目にしている感じだった。オーディオの理屈からしたら、余計なものが無い方がいい、とも言えるし、問題ないのかもしれないけど、普段見慣れている物とは違うだけで、ちょっと否定的な気持ちになる。でも要所はしっかり押さえているのは分かる。

ハンマー オリジナル

ここからは、画像無し。ダンパー交換。初めから欠損していて、新しく加えた。
フェルト類は全て交換し、ワイヤーは磨き、ダンパースプリングも交換した。

ダンパーの欠損

 

 

ハンマーヘッド。形からアメリカ製と思うようなものだった。リベットの方法も、貫通させてから開いて止めるのではなく、ねじって止めていた。
これも写真撮ってない。ハンマー横から

鉄骨も、ハンマーも、どこかアメリカを感じる。ハンマーはオリジナルではないかもしれないけど。
因みにハンマーの角度が上向きぎみだったので、交換した時に補正した。お客様の好みの音を考え、レンナー製に交換した。

次は、鍵盤について書きます。