ホルーゲル 最終調整

工房では、ホルーゲルの最終調整を行いました。

本体にアクションを取り付けて、ピアノとしてのアクションの動きを望ましい状態にし、タッチと音色を取り戻していく作業です。

鍵盤がスムーズに動くように調整し、ハンマーが弦に真っすぐ当たるように調整し、さらに全ての部品が上手く連動するようにしていきます。

作業途中、ネジで調整できるようになっている部品が折れたりもしました。購入されてから半世紀以上経過したピアノなので、ときどきある事です。

これは、鍵盤とアクションの間を調整するキュプスタンと呼ばれる部品ですが、ワイヤーが錆びて、回そうとすると折れてしまいました。

新しいワイヤーとパイロットに交換しました。

調整を終えると音がはっきり出てくるようになります。タッチも揃いました。
そこで気になってくるのが音の質感です。

音が硬く、ハンマーが弦を打つ打撃音が強く、粗さを感じました。親方に相談したところ、親方に一部のハンマーの整音をしてもらい、音色の変化を聞かせてもらいました。どんな仕上がりにするか二人で決め、その音にするにはハンマーのどこに何回針を刺すのがいいのかなど、指導してもらい、作業を進めていきました。

整音後は、音の芯はありつつ、打撃音も気にならなくなり、音の粗さも少なくなり、全体的にまとまりのある音になりました。

修理前のホルーゲルの印象は、いい音を持っているピアノだという印象でしたが、スティックが酷く、タッチもガサガサしていました。

本来の音の良さを残しつつ、タッチも音もクリアになりました。

最後に親方にチェックしてもらい、ホルーゲルは工房を出発し、お客様の元へ帰って行きました。

この修復されたホルーゲルで、またたのしんで弾いて頂きたいなと思います。

ここでお知らせです。

工房は明日から冬期休暇になります。

12月29日から1月4日までお休みです。

今年もお世話になりました。

みなさま、良いお年をお迎えください。

来年も宜しくお願いいたします。

by真帆

ホルーゲル アクションと鍵盤修理

工房では、ホルーゲルのアクション修理と鍵盤修理をしました。

鍵盤やアクションに使われているフェルトやクロス

は、部品同士が当たる・接触する場所に使われています。たくさん使われると、すり減ったり、汚れが発生し、雑音の原因や弾きづらさに繋がっていきます。

更に、このホルーゲルが製造されてから推定60年たっており、経年変化による劣化も目立ち、ほとんどのフェルトやクロスがいたんでいました。

ダンパーレバークロスの交換

ダンパーは音を止める部品です。

今回交換したのは、二つあります。一つは、写真の下の方に見えるクロスです。部品同士が当る部品は削れて、凹んでいました。このまま使い続けると、クロスに穴があいて雑音になったり、タッチがガサガサしてしまいます。

もう一つは、写真の真ん中あたりに見える赤くて丸いクロスです。ダンパースプリングを受け止めるために付けられており、最近のピアノにはない丁寧な造りになっています。

鍵盤を押したり、ペダルを踏んだ時に、汚れているスプリングと古いクロスが擦れて雑音の原因になっていました。

どちらのクロスも張り替えて、スプリングも汚れを拭き取りました。

ペダルを踏んでみると、雑音がなくなりました。

ウィペンヒールクロスの交換

写真に写っている緑色のフェルトを交換しました。

このフェルトもキャプスタンという部品がガサガサしていると、削れてしまいます。

フェルトが削れると雑音の原因になります。

鍵盤修理

キャプスタンプの黒鉛磨き 塗り替え

黒鉛が取れて、木が見えてしまっていました。

鍵盤とアクションが接する大切な部分なので、滑らかに動くように、ガサガサをペーパーで研ぎ落とし、黒鉛を再度塗り直して、皮で磨きます。

鍵盤ブッシングクロスの交換

鍵盤に使われている赤いクロス(バランスブッシングクロス)が黒ずんで劣化しています。

クロスはかなりすり減っていて、適切な厚さは残っていませんでした。


クロスの適切な厚さは、タッチに関わる大事な部分です。

これらも全て交換しました。

アクション、鍵盤の修理が終わり、少し音を出してみました。タッチのガサガサやスティックがなくなり、スッキリした感じになりました。

これから、調整に入ります。ピアノの音を聴くのが楽しみです。

by真帆

象牙鍵盤 漂白

工房では、象牙鍵盤(白鍵)の漂白を行いました。

象牙鍵盤は、指なじみが良く弾きやすい材質なのですが、経年変化や汗などで段々と黄ばみが出てきます。特に中音付近は、よく弾くところなのでだいぶ黄ばみが目立っていました。

因みに現在では、ワシントン条約により、象牙の国際取引が禁止されています。

象牙を漂白して、黄ばみを出来る限り落とします。

象牙の漂白は天気が良く、日の高いうちがチャンスです。秋から冬にかけては日が傾くのがはやいので、朝一番に取りかかります。

日光が良く当たるところに象牙鍵盤をセットして象牙の上に障子紙を置き、その上から過酸化水素水(オキシドール)をたっぷり塗って日ざしに当てます。

この作業を繰り返し行います。

障子紙を剥がすと紙に黄色が付着していて、黄ばみが薄くなっていくのが分かりました。

象牙鍵盤も元の白い色に近づいて、綺麗になりました!

また、たくさん楽しんで弾いてもらえるようにホルーゲルの修理を進めていきます。

by真帆

ホルーゲル ハンマー植え

工房では、ホルーゲルのハンマー植えをしました。

前回のブログで、ハンマーの第1整音について載せましたが、ハンマー植えは、第1整音されたハンマーとシャンク、バットを接着していきます。

シャンクの仕分けをします。金属板にシャンクを落として音を聞き、音の高さごとに分けていきます。低い音は低音に高い音は高音に使います。

ハンマーとシャンクの接着をします。

ハンマーを隙間なく並べ、シャンクをハンマーウッドの穴に仮入れていきます。

シャンクを真上から前後の傾きを見て、正面から左右の間隔を見ます。

大きく外れているものがたまにあるので、シャンクを削ってのり紙をはり、調節します。

接着はニカワを使います。

ニカワは、温度と水分での管理が必要な接着剤で、丁度良い加減を保つのはなかなか難しく、水で調節しながら、使いました。

シャンクとハンマーがついたら、基準で残して置いたハンマーの隣に、新しいハンマーをバットに入れ、シャンクの高さを決めます。

長さが決まると、シャンクをノコギリで決まった長さに切り、ヤスリで微調整して長さを揃えます。

この長さで弦を打つ打弦点が決まるので、何度も見直しをして、揃えました。

ハンマーとバットを接着していきます。

ハンマーヘッドの角度と先ほど決めた長さに気をつけて作業を進めました。

ハンマー植え完了です!

ハンマーを弦に”ポン”と弾ませてみると、新しく伸び伸びした音が出ました。

これから、ピアノとしてどんな音になっていくのか楽しみです。

by真帆

ホルーゲル ハンマー第一整音

工房では、ホルーゲルのハンマーの第一整音(下刺しとファイリング)をしました。

第一整音(下差しとファイリング)は、ピアノの発声を良くするために重要な作業の一つです。
ハンマーフェルトは、フェルトで出来ているとはいえ、フワフワな状態ではありません。

堅く作られたフェルトの塊は強い圧力によってハンマーウッドに接着されています。

発声を良くするために、最適な弾力を作らなくてはなりません。新しいハンマーは、メーカーや種類にもよりますが、堅い場合がほとんどす。

ハンマーは弦を打つ部品なので、第一整音(下刺しとファイリング)は音にダイレクトに影響します。
特に音のダイナミックレンジを広げます。
因みに音が硬い、柔らかいなど、イントネーションや音色を整えるのは第二整音以降で詰めます。

本来、整音作業は音作りの作業のため、全ての部品が揃い、調律と整調が終わってから行うのが望ましいですが、全てついた状態での下刺し作業は困難という事と、フェルトの表面をむく必要があるので、親方の経験から針刺しの回数や長さ、フェルトのむく量について指示、助言をもらいながら作業を進めました。

下刺し

刺す回数を数えながら、針の角度、長さ、刺す所に注意して刺していきます。
間違えて刺しすぎたり、ハンマーの先端に近いところを刺すと柔らかすぎる音になってしまうので、後が大変です。
刺す回数がわからなくならないように、ぶつぶつ数えながら作業しました。

因みに、ハンマーの先端に近いところは、音を聴いてから刺していくので、この段階ではやりません。

ハンマーファイリング

新しいハンマーは、製造時ハンマーの切り口がそのまま残り、ミミが付いている状態です。


なので、そのミミを削りながら形を整形していきます。

左→加工前

右→加工後

ハンマーの打弦する面が斜めに削れていないかに気を付けて行いました。

第一整音は緊張する作業で、長い間集中して行わなければならないので、休憩を取りながら行いました。
次はハンマーを植えていきます。

by真帆