Pleyel AL 塗装作業

今回は塗装作業について書いていきます。

セラックで塗られていたので、それでいくことにした。またそうするしかなかった。
予算、作業環境、仕上がりなど考慮して、セラックを選ばざるしかなかった。
黒ラッカーも考えたが、作業中に出るシンナー臭で、近隣に迷惑になる。作業者も、工房が狭い為、恐らく中毒になっただろう。

セラックにしたのはオリジナルにこだわった部分も当然ある。
参考にしたのは、本を数書、ネット動画、
更に名古屋の職人さんに電話で質問したりして作業していった。貴重な時間を割いてくださって本当に感謝している。特に黒いセラック作りに関しては、いいヒントをくださった。

リストリーアンティーク
https://www.restoryweb.com/

セラックニスで塗装されていたが、写真のように、高音域は日焼けして、すっかり色も塗料も落ちていた。
ペンで書いたような線は、推測だが、過去に(少なくとも50年前)にオーバーホールされた時に、塗料が抜けた隙間を他の塗料で埋め、、、
周りのセラックはその後抜けていって下地が出てきて茶色になり、後から入れた他の塗料だけが、線のように残ってしまったのだと思う。

塗装 高音側板
下地をペーパーでひたすら研いで整える。

本体研ぎ1

そのあと、黒セラックでタンポ塗りを繰り返ししていく、時間を開けながら50回はやったかも。
塗装は失敗と迷いの連続だった。黒いセラックを自家製で作ったが、どうも混ざり切ってなく、塗り終わった後乾ききれない事が多く、白い曇った仕上がりになってしまったりした。
専門家に聞いたら、日本には黒セラックは無いらしく、黒とセラックを混ぜてからしばらく置いた方がいいと言われた。その通り、完璧ではないけれど、かなりましになった。

側板塗装作業

大屋根。上面の板が剥がれかけていたため、接着剤を流してはクランプしていった。恐らく内部の心材も接着剥がれを起こしていると思ったので、大屋根を立ててエポキシを流したりした。(写真にはない)

突板剥がれの補修4

 
裏面はとりわけひどく、下地をサンダーで研ぎ、そのあとカンナで平を出していった。

大屋根研ぎカンナかけ

 
夕飯を食べた後、裏面を塗って、乾いた日中は表面を塗っていった。
セラックはアルコール系の塗料だが、作業最中に酔っぱらった感じになった。フルコンは大きいと改めて感じた。

大屋根裏塗り開始

 
鍵盤蓋。オリジナルはこんな感じ。全ての外装でそうだが、予算、時間などを考え、下地を完璧に整えず、進めることにした。

外装 鍵盤蓋 内部 正面

 
プレイエルは多くの機種で、鍵盤蓋が親板と擦れてしまう。サイドをカンナやヤスリで2mmは削った。

横ずれ加工 低音

 
塗り終わって、ロゴのマスキングを剥がしていく。

マスキング剥がし

 
剥がし終えたところ。剥がしたマスキングをテーブルに貼ってみた。

マスキング剥がし後

 
前屋根の前框と当たるところはかなりボロボロだった。さすがにこれだけひどいところは、接着剤と木材、パテを使って整えてから塗った。

前屋根の破損

 
仕上げ作業は納入後にも行った。(東大先端研、ENEOSホールにて)

本体塗装仕上げ

 
定期メンテナンス時にも塗り重ねていくつもり。次回はアクション関連について書いていきます。

Pleyel AL 本体の飾りの加工

こんにちは。今回は、外装の飾りの修復についてまとめてみました。

側板の下側を縁取るように、凸部の飾りが張り付けられている。

飾りの剥がれ

本体をひっくり返してみると、過去に、剥がれてしまった形跡があり、誰かがクランプもせずに接着したのか、所々隙間がありひどい状態だった。

飾り剥がし

刃物や、アルコールやアセトンを使って、傷めないように慎重に、全て剥がしていった

何日かかったか忘れたが、剥がし終えた。

飾り剥がし後 全体

どうしても痛めてしまった箇所も多くあり、

飾り剥がし後

表面を綺麗に処理していった。

下地補正

ほとんど腐りかけているような箇所は取り除いた。

飾り加工

剥がした凸部は二枚の板を貼り合わせて作られていた。これらもいい加減に接着されていて、何の薬品を使ってもはがれなかったところは、場所によっては細いノコギリで切り込んで二枚に分けた。
すごいしんどい仕事だった。

飾り二本に分ける作業

下地を完全に整えてから、一本ずつ再び本体に接着し直した。こういうのは一度接着剤無しで試しにやってから、本番素早くやるようにしている。

飾り接着作業

切り取ってしまった箇所は、化粧板で補修した。

飾り接着後 補正

飾りパテ

最後はペーパーなどを使って仕上げていった。

飾り整形

やったことのない作業を、いきなり大きなフルコンでしている。忍耐強く作業した。ホント、きつかった。

次回は塗装について書きます。

Pleyel AL 響板修理

こんにちは。今回は響板修理についてまとめてみました。

フルコンはやはり大きいと痛感しました。

養生をして、響板のニスを剥がしているところ。アルコールを使った。
剥離開始

隅々まで丁寧にはくっていった。

剥離作業

剥離が終わった後、狭い第二工房に移動した。出庫までここから出さないつもり。

響板埋木作業。割れている箇所を専用のトリマーで少し大きめに加工し、出来た溝に合わせて埋木を接着し、カンナで表面を面にした。

埋木溝作り

時には本体に乗って作業した。

埋木作業 上に載って

使った電気工具たち。

使った電気工具

これらの作業から、エアコンをつけっぱなしになった。この写真は7月初め。この時はこの夏がこんなに暑くなるとは思わなかった。

温度湿度管理

全ての埋木作業が終わった後は、隅々まで古いニスや汚れを取る作業をしていった。

低音駒詳細

 

作業風景

 

この作業に興味を持ってくださっていた、先輩の調律師。いろいろ助言もいただいた。作業にも参加してくださった。

掃除

隅々まで

 

最後は手のひらで上面をなんども擦って、小さなごみを取り除いた。

研ぎ終わり

翌日以降にもう一度手のひらで擦った後、一気に刷毛塗りをした。使ったニスはJahnのセラック系のもの。

上塗り

合計3回塗った。

上塗り後

狭い場所でアルコール系のニスを使ったためか、頭がくらくらした。フルコンの大きさをこんなことで実感するとは思わなかった。

次回は外装の飾りの修理について書きます。

Pleyel AL 脚の改造 本体側

こんにちは。前回は、脚そのものの作業を書きました。
今回は、脚の受け側について書いていきます。

接着されていた、脚の根っこを外したところ。

後脚外し後

化粧板がかなり剥がれていたので、ひどいところは新しい化粧板に変えた。

脚本体 化粧板の剥がれ

まずは、剥がして、平らを作り、

脚本体 化粧板を剥がした後

新しい板を接着。化粧板の接着

キャスターを一昔前のダブルキャスターに代えることに決めたが、ピアノの高さが低くなってしまう為、高さ増やさなくてはならない。
過去のピアノのデザインや、強度などを考慮し、本体側にさらに大きな板を付けることにした。写真の白く見えるが新しく加えたブナ材。
脚 スペーサー

受け側を広げ、
棚板の加工

ブナの平を出して、カンナがけ

接着した。接着作業

こうやって、写真を文章だけだと簡単そうに見えてしまうが、えらく悩んでなかなか進まなかった工程だった。
オリジナルにどうしても手を加えなくてはならず、美観を損ねたくないし、安全性は言うまでもなく重要。脚が不安定だと、音もいろいろな面で悪くなる。

そしてかなりの作業がやり直しがきかず、冷や汗を流した時も多々あったが、腹をくくって気合でやり切ったりもした。

新脚

今しっかり立っていて、響板や外装の作業をしている。あとはひたすら前に進んでいくつもり。

次回は響板修理作業を上げます。

Pleyel AL 脚の改造 完成まで

しばらくブログを書くことが出来ないほど、忙しい毎日をすごしています。
ひと段落したので、これまでの作業を小出ししていきます。

オリジナルの脚から新しい脚へ

オリジナルは、キャスターが濡れたりしたのか、さび付き転がらず、化粧板も所々剥がれていて、作業前は脚全て作り直した方が安心かもと考えていた。
とはいえ、修復作業はオリジナルを大事にしたいところ。とりあえず使えるかどうか探ってみることにした。

脚 高音部

今工房にある、1899年製造のPleyel #3と比較してみたりもした。

脚 1,899年製造 No.3との比較

まずは、サビたキャスターを外して見た。木部がかなり痛んでいた。

錆 キャスター 外し

キャスターのサビ落とし、数日掛けてTryしてみた。サビは取れたが、転がらず、仮に転がったとしても、とても使い物にならないと判断し、あきらめた。

旧キャスターサビ落とし

化粧板も、こんな感じで剥がれるところと、そうでないところがあった。ただ芯の部分は思いのほか痛んでいないようだった。(剥がれるところは新しい化粧板に張り替えた。)

化粧板剥がし

続いては、本体との接合部。当初このネジの造りが弱々しく感じたので、日本の脚の取り付け方法に改造するつもりだったが、
取り付け後にボルトの頭が見えてしまう。このPleyelのデザインは、ボルト類が全く見えないので、デザイン的にどうかと思って躊躇していた。こちらもオリジナルで行けるか試してみた。

ネジ部の加工

ネジがぐらついていたわけではないし、案外いけるかもと判断。隙間にエポキシを流して補強した。(手前のマイナスネジは恐らく過去に修復した時につけたものだと思う。)

エポキシ含侵後

新しいキャスターに交換する為、下の端を切り落とした。

脚 下端切断作業

 

3本とも断面が意外と綺麗でしっかりしていた。オリジナルを使うことに決めた。

 

下端断面

 

新しいキャスターを付けるには、上の写真の中央部に深く大きな穴をあけなくてはならなかった。
脚を逆さに立てて穴あけしなくてはならず、手持ちのボール盤では高さが足りず不可能だった。なのでボール盤の高さを増やすため、下の写真の土台を作った。
穴あけ作業は難しいものになると承知していたので、心身ともにいい状態のときに、勇気をもって行った。写真を撮る余裕がなかった。

ボール盤延長台

キャスターは熟慮を重ねた結果、一昔前のタイプにした。まだドイツの部品屋で取り扱っていた。

新キャスター

真鍮の輝き、なんかいい感じ。

新脚

 

こうやって作業を書いてしまうと簡単なようだけど、自分で考えて決断し決行に移るまで大変だった。
今後も安全安心して使える事と、デザインや音などに問題ないものにしたつもり。

次回は脚の受け側を書きます。こちらの方も大変でした。

孝則