Pleyel AL 脚の改造 完成まで

しばらくブログを書くことが出来ないほど、忙しい毎日をすごしています。
ひと段落したので、これまでの作業を小出ししていきます。

オリジナルの脚から新しい脚へ

オリジナルは、キャスターが濡れたりしたのか、さび付き転がらず、化粧板も所々剥がれていて、作業前は脚全て作り直した方が安心かもと考えていた。
とはいえ、修復作業はオリジナルを大事にしたいところ。とりあえず使えるかどうか探ってみることにした。

脚 高音部

今工房にある、1899年製造のPleyel #3と比較してみたりもした。

脚 1,899年製造 No.3との比較

まずは、サビたキャスターを外して見た。木部がかなり痛んでいた。

錆 キャスター 外し

キャスターのサビ落とし、数日掛けてTryしてみた。サビは取れたが、転がらず、仮に転がったとしても、とても使い物にならないと判断し、あきらめた。

旧キャスターサビ落とし

化粧板も、こんな感じで剥がれるところと、そうでないところがあった。ただ芯の部分は思いのほか痛んでいないようだった。(剥がれるところは新しい化粧板に張り替えた。)

化粧板剥がし

続いては、本体との接合部。当初このネジの造りが弱々しく感じたので、日本の脚の取り付け方法に改造するつもりだったが、
取り付け後にボルトの頭が見えてしまう。このPleyelのデザインは、ボルト類が全く見えないので、デザイン的にどうかと思って躊躇していた。こちらもオリジナルで行けるか試してみた。

ネジ部の加工

ネジがぐらついていたわけではないし、案外いけるかもと判断。隙間にエポキシを流して補強した。(手前のマイナスネジは恐らく過去に修復した時につけたものだと思う。)

エポキシ含侵後

新しいキャスターに交換する為、下の端を切り落とした。

脚 下端切断作業

 

3本とも断面が意外と綺麗でしっかりしていた。オリジナルを使うことに決めた。

 

下端断面

 

新しいキャスターを付けるには、上の写真の中央部に深く大きな穴をあけなくてはならなかった。
脚を逆さに立てて穴あけしなくてはならず、手持ちのボール盤では高さが足りず不可能だった。なのでボール盤の高さを増やすため、下の写真の土台を作った。
穴あけ作業は難しいものになると承知していたので、心身ともにいい状態のときに、勇気をもって行った。写真を撮る余裕がなかった。

ボール盤延長台

キャスターは熟慮を重ねた結果、一昔前のタイプにした。まだドイツの部品屋で取り扱っていた。

新キャスター

真鍮の輝き、なんかいい感じ。

新脚

 

こうやって作業を書いてしまうと簡単なようだけど、自分で考えて決断し決行に移るまで大変だった。
今後も安全安心して使える事と、デザインや音などに問題ないものにしたつもり。

次回は脚の受け側を書きます。こちらの方も大変でした。

孝則

Playel AL 脚の改造準備と、支柱の補強

脚は木のネジで付けるタイプ。製造が1900年前後の木のネジを見たことがあるが、とてもいい仕事をされていた。
今回の1952年製は、簡単にねじ込めて、簡単に外れすぎる。よく見ると少々雑に作られているのが分かる。折れる可能性があるので、取り付け方法を改造することにした。

脚のネジ

その為に足の土台部分や、棚を外した。

アルコールとメスを慎重に入れていく。合成接着剤ではなく、にかわだと分かって少し気が楽になった。時間をかけて慎重に進めていった。

後脚外し

後脚外し後

後脚土台外し

続いて棚も外して(結構大変だった)裏返しにし、エポキシを流すので養生した。

棚外し後、裏面養生

支柱の接続部分の剥れやぐらつきは、掃除をした時に気が付いていた。エポキシで接着させてから、木材で補強することを決めていた。

支柱のぐらつきの程度を撮影した。このぐらついた柱と鉄骨が繋がっていたと思うとゾッとする。鉄骨が折れても不思議ではないレベル。(BGMを消すべきだった)

接続部分はネジで固定されていたので、確認も兼ねて全て締めなおした。大事な一本がバカネジだったので交換した。写真のプラスネジがそれ。少々太くて長いものにした。

3本支柱取り付けネジ交換

この支柱まわりに関しては、きちんと製造されていたとは言い難い。これでは振動をしっかり下支えする事が出来ない。

ありとあらゆる隙間に薄い化粧板や紙を詰め、エポキシを流し数日おき、特に弱かった支柱の接続部には、それに合った形や材料の補強板を取り付けた。

支柱エポキシ流し後と、補強材

支柱補強後

修復前に試弾した時、フォルテが腰無しになったのは、この支柱周りの弱さも原因のひとつだったと思う。

フルコンでこの類の作業をするのは、重くて大きくてホント大変。

孝則

Pleyel AL ピンブッシング発注で

ピンブッシングを当然交換するのだが、サイズが一般的なものと違い、部品屋さんから手に入らない。測定したら、φ11.5のようだった。

Pleyel AL ピンブッシング

9月17日、福島県南会津町でコンサート調律があったため、ついでに(株)オグラに行くことにした。

ヤマハに木材をおろしていたこともあるとの事。
担当者の渡部さんが、ハンマーヘッド用のシデや、アクションレール用のブナなど、ヤマハの要求が厳しくて大変だったことなど話してくれた。

このPleyelのピンブッシングの木材が何なのか、二人でいろいろ話しながら、バルロンのシルビーさんが、プレイエルの駒上面に洋ナシを使っていたことがあると聞いていて、その色に似ていると伝えたら、確かにそれっぽいということになった。
ただ、食用のそれとは質が違うし、そもそもここにはない。そこで結局、今では一般的な楓にすることにした。
外にある広い倉庫の中にある、楓の中から、これがいいのではと出してくれた。

オグラ

楓材の選択

比較的木材が密で均一なもの選んでくれ、赤身と白太について教えてくれた。本当にφ11.5でうまく行くか分からないので、一本試しに製作してから正式発注するつもり。

濃い話ができた。木材から選ぶのは初めての経験。ヤマハとオグラさんに感謝。

孝則

 

Pleyel AL 本体掃除 駒磨き

鉄骨上げ

鉄骨上げ作業

スペースの問題で、倉庫内で鉄骨を上げました。バランスをみつけるのに一苦労しました。

本体を工房に移した後、今後の作業で邪魔になる鉄骨支柱ボルトを、寸法測定後に外しました。

支柱鉄骨ボルト抜き

駒ピン磨がき

所々深いサビもありましたが、きれいになりました。駒ピン交換はしない予定です。

駒ピン磨き風景


駒ピン上面磨き

 

響板の裏の掃除

本体裏側立てた後

雑巾がひどく汚れました。ホールではなく、長い間住居にあったので仕方がないです。

フルコンは、なにやるにしても、大きく重くて本当に大変です。

孝則

Pleyel AL 解体作業

6月から、諸々の状態を観察確認、測定、撮影などをし、解体作業を進めています。

今回の作業は3月半ば納期と決まっています。どんどん進めて問題を見つけて列挙し、出来る人に仕事を振っていかないとなりません。
私は親方的な役割が求められます。自分で手を動かしてやるのが楽ですが、それでは間に合いません。冷静に進めていくつもりです。

外装 鍵盤蓋 内部 正面

セラック塗装の剥がれが、特に高音側板に見られます。

塗装 高音側板

歪みがあるのか、鍵盤蓋を開閉する際に擦れた跡があります。

外装 鍵盤蓋の開閉時の擦れ跡

外装を塗装屋に出して、ポリウレタン塗装することを考えてましたが、厚塗りになるので、更に鍵盤蓋を開閉する際にこすれあってしまうし、他の箇所でも擦れる結果になると予想できたので、工房で薄塗りで仕上げることにしました。下地素地調整をしっかりやらないとならず、大変にはなりますが、頑張ろうと思います。

脚 高音部 キャスター

脚は、飼い犬におしっこをかけられていたそうで、サビが大変ひどく、木材の心材の状態によっては作り直しです。

倉庫にあったピアノをメインの工房に入れました。ギリギリ入りました。

内部全体

内部全体

解体作業に入る前にます。まずは現状で弾いてみて、探っていきます。

現状の確認 試し整音

いろいろ確認し、スタインウエイ系の技術者によって、オーバーホールされていると判断しました。ハンマーも変えてあり、タッチウェイトも確認しましたが、次高音域では大変重くなっていました。ダウンウェイトが通常約50g強いのところ、70gでも落ちないところもありました。本来どのような音だったのかは知る余地もなく、知識のある技術者に相談したり、作業を進めながら感じていき、どのようなハンマーにすべきか決めようと思います。
解体前にはピアニストの筒井一貴さんにも弾いてもらい、感想をいただきました。写真撮り忘れてしまいました。

脱弦作業では、一本ずつピン味を確認しながら少しずつ音を下げていきました。作業途中にすべての弦の太さと長さを測定し、脱弦しました。

脱弦作業

ピンを抜く作業でもピン味を確認し、ピン板に負担をかけないように抜き取りました。

ピン抜き作業

鉄骨のボルトも全て外し、鉄骨を上げるため再び倉庫に移動しました。

鉄骨上げ準備 広角画像

次回は鉄骨を上げます。

孝則