ホルーゲル 修復その後

一昨日は異常に温かくて驚きましたが、しれっと冬が戻ってきました。今日はクリスマスイブ。早いもので今年もあと一週間ですね。

先月、今年修復したホルーゲルをご所有のS様宅へ伺い、一か所音が出にくい箇所を直しに行きました。些細な原因ですぐに治りました。ご主人はこのピアノを修復して本当に良かったと仰ってくれました。

ホルーゲルの修復作業はこちら

もともとこのホルーゲルは、ピアノの先生だったS様のお婆様の物でした。昨年暮れ、修復依頼を頂きご実家に伺った時は、すでに施設で生活されており、私はお会いする事が出来ませんでした。

津波被害のピアノが重なり、修復を終えたのは7月。予定よりも2か月遅れてしまい、しかもお婆様は既に他界されてました。非常に残念で、申し訳ない気持ちになりました。

ピアノがS様のマンションに納入されたのは、他界されてから50日目でした。ちょうど49日と重なり、多くの親せきが集まり、この新しく生まれ変わったピアノの元にも来てくれました。以前はジャンジャンしてた音が、柔らかく温かな音色になったと、皆さん喜んでいただいたそうです。

S様の奥様も、ご実家のピアノが断りもなく勝手に処分されて悲しんでた所に、ホルーゲルが来てくれたと喜ばれ、今はS様ご夫妻とお子様たちで大切にされております。

お客様のピアノの修復ではいつも、家族や、人と人との絆について考えさせられ、感慨深い気持ちになります。穏やかで心あたたかなクリスマスをお過ごし下さい。

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新工房、片付け。

今年もあと半分を切りましたね。師走になると、あっという間に時間が過ぎて行くような気がします。

今週はピアノ修復はお休み。

新工房になりピアノ修復を始めてみて、工具の引越し作業などはしたが、内装、外壁、以前のパン屋さんのままになっていたので、整えることにしました。
こちらはパン屋さん時代の外観。

内装の塗装、水道や電気のことは地元の牧口工務店さんにお願いしました。(こちらの工務店さんはこの建物自体を30年ほど前に建てて頂いています)


さすがプロのお仕事、手早くあっという間にキレイにしていただきました。今では快適にピアノに集中できます。

そして外壁は自分達で塗りました。


あとは看板をつけて完成です。(ただ今制作中)

浜松、ピアノの製造の訪問記。(後編)

次はピアノの低音弦(通称、巻き線)の貴富工業さん。

ピアノの低音弦は巻き線といって、ミュージックワイヤーに銅を巻きつけて作ります。ピアノによっても一台一台設計が違い、基本的にオーダーメイドで作ってもらいます。機械を使いますが、巻き方や巻き具合は職人さんの経験によって違います。そういう意味ではハンドメイドですね。

ピアノのベース(低音部)を決める巻き線。貴富さんは巻き線造りができる貴重な職人さんの一人です。これからもお世話になると思います。

友人技術者と別れ、最後に向かったのは渡辺商店さん。

ピアノの工具や部品を扱っています。我々が使う、様々なピアノ専用工具や部品がたくさんありました。新しい商品の開発もされていて、丁寧に説明いただきました。

今回購入したものの一部。


色々な商品に目移りしてしまいました。

いつもは電話連絡のみだったので、はじめてお目にかかることができて良かったです。

遅くまで対応していただき、ありがとうございました。


浜松のピアノ関連業者さんを見学させていただきました。突然訪問したにもかかわらず、快く対応してくださり、改めて感謝します。ありがとうございました。またこの様な機会を作っていただいた、友人技術者にも感謝です。

それほど広くない地域を訪問しましたが、たくさんの業者さんがあり、浜松はピアノ造りのメッカだと改めて思いました。機会があればまた浜松へ行き、日本のピアノ造りの現場を体感したいと思いました。今回の旅でのことを少しでもお客様へ生かしていきたいと思います。

浜松、ピアノの老舗、訪問記。(前編)

今年もあと1ヶ月を切りました。師走になり年末年始の話もちらほら出るようになってきて、なんとなく忙しい様子ですが、健康には気をつけたいものです。

今週は友人の技術者さんにお誘いいただき、浜松へ行ってきました。浜松はピアノ造りのメッカ、日本におけるピアノ産業を支えている地域です。様々なピアノパーツ屋さん、ピアノ工具屋さん、修理屋さん、ピアノ塗装屋さんなど、大小様々なピアノメーカーさんがあります。

今回はいつもお世話になっているメーカーさんを中心にご挨拶させていただきました。どちらも突然の訪問でしたが、快く対応していただき、ありがとうございました。
まずはアクションメーカーのトキワ製作所さん。国内で唯一のピアノアクションメーカーです。

私達の工房では新生釜石教会のピアノ修理の時にお世話になりました。品質の良い木材やフェルトについて、時代と共にピアノ産業がどの様に変化していったかなど、様々なお話をさせていただきました。アクションメーカーさんならではの普段聞くことができないことを知り、今後に繋がる考えを得ることができました。。創業60年以上、これからもお世話になります。
続いてはナチュラルピアノさん。


実は別のピアノ屋さんに行く予定で、間違えて訪問したにもかかわらず、なんと工房見学をさせていただくことになりました。こちらはピアノの修理工房でいくつか修理しているピアノを見せていただきました。

まずはミニピアノ。


※どちらも非売品だそうです。
日本のピアノメーカーも、台数は少ないですが、この様な遊び心がある、かわいいピアノを作っていました。楽器としてもきちんとしていて、逆に今の時代にマッチしている気がしました。

そしてイギリスのピアノ


元は黒のピアノだったそうですが、塗装を落としたらキレイな木目が出てきたので、木目のある茶色の塗装にしたそうです。1920年代のピアノだそうですが、見えない所にも良い木材を使っていたのですね。

社長の森重さん、ピアノメーカーでピアノを作った経験のある、今では数少ない職人さんでした。(奥様にもお世話になりました)様々な経験をされた後、こちらのピアノ修理工房を立ち上げられたそうです。全国様々な調律師さんにも慕われているベテラン技術者さんでした。色々なアドバイスを受け、勉強になりました。これからもお元気で活躍していただきたいです。(下は工房内写真)

浜松訪問記、後半はまた後日書きます。

古楽器工房、訪問。

寒くなりました。今週は関東地方でも雪が降りました。11月の積雪は54年ぶりだったようです。この辺りはまだ葉も落ちきっていないので、紅葉もあと少し楽しめそうです。

今週はお客様のご紹介で、八王子にある古楽器製作家、山野辺暁彦さんの工房へ行ってきました。

ピアノが今の形になる以前、ヨーロッパを中心に様々な鍵盤楽器がありました。パイプオルガン、ヴァージナル、チェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノなどの歴史は古くからある様で、今でもよく弾かれるバッハ、モーツアルトなどの作曲家は、この様な楽器で作曲していました。

山野辺暁彦さんの工房には、たくさんの楽器がある工房で、色々試し弾きさせていただきました。

まずはバージナル。

小さくかわいいらしい外観でしたが、音量は驚くほど大きい楽器でした。とても軽く、一人で持ち運びできそうでした。

次はチェンバロ。


イタリアンと呼ばれる様式の楽器でした。こちらは江戸時代の頃の家屋を解体した際の天井板を響板に使い製作されたそうです。150年以上経った楽器になっていたなんて、江戸時代の頃の人がタイムスリップしたら、さぞかし驚くでしょう。

そしてクラヴィコードも。


この他にもパイプオルガンや、面白い仕組みの足踏みパイプオルガン、などなど色々あり、ゆっくり試し弾きをさせていただきました。古楽器となると難しそうなイメージですが、気軽に色々な楽器を体験させていただきました。

この様な機会を作っていただいたお客様、長々と指弾とお話に付き合っていただいた山野辺さんには本当に感謝です。ありがとうございました。

ピアノだけでなく、他の鍵盤に触れたことで勉強になりました。色々な楽器から改めてピアノを見る良いきっかけとなりました。