工房は前回のプレイエルと、その前のホルーゲルがあまりにも大変だったため、半年から1年も完成を待たせてしまっているお客様がいてご迷惑をかけている状況です。今回から推定、昭和元年~4年製のヤマハ2型(85キー)の修復過程をお伝えします。
もう5年以上前に、ある工房で処分される直前だったところ、たまたま妻が居合わせて引き取ったピアノ。私よりもピアノに詳しいお客様にお伝えしたところ、是非購入したいと仰ってくださり、修復、販売することになった。
修復前の音は、以前とりあえず記録した。
恐らく象牙だったのだろう。鍵盤上面が剥がされて、木部がむき出しになっていた。
弦に関わる箇所では、ピンブッシュが無く、プレッシャーバーが大きく、弦が少し細めで、
アメリカのピアノ、特にスタインウェイを想起させるものがあった。
この頃のヤマハは、ベヒシュタインのシュレーゲル、山葉直吉、大橋幡岩、河合小市が在籍していた時期に近く(もしかしたらまだ在籍していた)、アメリカの影響を受けているだろうこの設計には、少々意外な感じだった。恐らくその前からある型なのだろう。
因みにアメリカのピアノから、ドイツよりはイギリスやフランスを感じる時が多い。
支柱が丸いダボで接続されている(写真下の小さな〇)。底板(写真上部)が底面を全て覆い隠していない。
脱弦の作業中。
鉄骨を外し、諸々確認。高音部の処理が丁寧。
鉄骨リブ部の駒の切り欠き。半円状になっていた。初めて見た。
駒ピン磨き。かなり細いピンが使われていた。ピンの一部は交換した。
このピアノ、いつものピアノに比べて、材料が少ない。腕木を支持しているマイナスネジ、いつもは4つ使われているが、3つしかない。
ピンずるがひどかった箇所は、ダボを入れて、新規に穴開けをして対処した。合計約20か所はあった。
鉄骨を外した後、響板を叩くとあまりいい音がしなかった。調べたら底面部で響板が一部剥がれていた。
あえてしっかり剥がして、接着剤を流して、クランプした。接着後、いい音が出るようになった。
掃除や磨きをして、鉄骨を合わせをした。
弦を外す前、ピンブッシュが無く、ピンが少し傾き鉄骨穴と接触していた箇所があった。これを解決するために、ほんのわずかに鉄骨が底板側になるよう、ピン板下部と鉄骨の間に薄い化粧板をかませて、少々強引に鉄骨を合わせて、ネジ締めをした。
オリジナルを尊重し、ピンブッシュは使わずに張弦した。
こう書いてみると、サラっとやってのけたように感じるが、結構痺れる判断決断があった。特に鉄骨合わせでは、ほんの0.5mm鉄骨を下にしたかったのだが、なかなかうまく行かず手こずった。何度も上げては下げてを繰り返した。
ただ、一つ安心だったのが、支柱の造り。ここにいい材料を使い、しっかり理にかなった構造だったら、アップライトはほぼ間違いないと思っている。因みにこの支柱は、上が太く下が細い。大橋さんがらみのピアノでよく見る設計。
次回はアクション関係について書きます。
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