新生釜石教会、被災ピアノの修理。6/5日お披露目

新生釜石教会、被災ピアノの修理。その後。

6/3、新生釜石教会に納入後に作業に行きました。
車は研修生含む4人、工具などでいっぱいでした。朝の7時最寄りの駅~15時に新生釜石教会に到着です。

納品後、以前に工房にも取材に来ていただいた、朝日新聞の星乃さんも記事にしていただきました。(釜石到着後の様子)

http://www.asahi.com/sp/articles/ASJ6144YWJ61UJUB00C.html

さて早速作業開始。

ピアノは長旅をしてきて、少し動いた様子。調整が必要です。

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また到着後からピアノを弾いていただき、響きは前よりも良くなってましたが、移動をしてきて調律も狂ってました。

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研修生2人にもサポートしてもらいながら、作業は20時までかかりました。

その後、工房のみんなと柳谷さんでお食事。海の幸をごちそうになりながら、今まであったたくさんのことを語りつつ、釜石の夜は過ぎていきました。(はまゆり飲食店街、竹寿司さん。2015年にぶらっと入った時の写真。今回は撮り忘れてしまいました)
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6/5、11時からお披露目コンサート。
当日は気仙沼市出身の研修生、斉藤さんに対応してもらい、演奏家は釜石出身の小井土文哉さん。

素敵なコンサートになる事を願ってます。

新生釜石教会、津波被害のピアノ修理、最終日。

新生釜石教会、津波被害のピアノ修理。
工房から釜石へ。

出荷前日に、はじめて音楽を奏でたピアノ。

中身は弾ける状態でしたが、外装を全て取り付けをしたのは出荷当日の朝。

以前にそれぞれの外装パーツを工房のみんなで磨いており、組み立てました。

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津波で傷がついたり、外装にヒビが入ってしまったものはあえてそのまま。(楽器として楽しく弾くことには問題ありません)
艶もキレイによみがえりました。

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出荷前日に気仙沼出身の研修生から、「最後に少しピアノを弾いてみたい」とのことでした。色々な思いもあったことでしょう。

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出荷直前まで作業していたので、ゆっくり弾かせてあげることができませんでした。
本当に少しの時間でしたが、工房のご近所のお爺ちゃんも来て、ピアノの音色を楽しんでいたようです。

運送屋の仙台ピアノサービスさんがピアノを引き取りにきました。(少し待たせてしまいました。)

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そして釜石へ。

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出荷直前は色々なハプニングがありましたが、無事に釜石へ届くことを願い、出荷しました。

工房ではそれぞれが皆、できる限りのことをしました。またご協力していただいたり、気にかけていただいた技術者の方々、津波被害のピアノ修理の経験のあるクラビアハウスさん、メッキ屋さん、ロゴデザインをしてくれた槇山さん、ピアニストの筒井さん。
何よりもピアノの修復を諦めないでいてくれた柳谷さん、教会の皆さん。
本当にありがとうございました。

あとは現地で最終調整です。

新生釜石教会、津波被害のピアノ修理、音が出るまで。

新生釜石教会、津波被害のピアノ修理。

最後に音を出す作業です。
ピアノは出来上がったてからそのままでは、音の鳴りもイマイチで、新しい部品も馴染むまで時間がかかります。
ピアノメーカーなどでは試弾器という機械があり、数時間~機械がピアノを弾く、工程があります。

工房では試弾を技術者が行います。(人間試弾器です)また試しに曲を弾くこともあります。

出荷までの時間もギリギリ、そしてはじめの音出しは是非良い音がいい!ということで、鍵盤楽器奏者の筒井一貴さんに音出しをお願いしました。
色々な楽器を弾きこなし、楽器の良さを引き出すことができる演奏家です。
また復興支援コンサートを長期にわたりされてます。

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狭い工房の中、グランドピアノと修復に携わった人、演奏家、が集まりました。

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演奏した曲は、新生釜石教会の牧師、柳谷雄介さん作詞、川上盾さん作曲をした曲を弾いていただきました。

教会のシンボルになる曲があればいいなと思い、牧師の柳谷さんに音源を
送ってくださいとお願いしたところ、まさかこのピアノの為の曲があるとは!思ってもいないことでした。

はじめてこの曲を聴いた時、衝撃を受けました。人間でいったら手術中の状態。まだ出来上がってないのに大丈夫か…?(もちろん出来上がりに向かってましたが)と正直思いましが、それと同時に良い楽器にしよう!と更に気合いが入りました。
修復中、工房ではこの曲を流し、口ずさんだり、してました。

音源のみを柳谷さんに送っていただいたので、筒井さんには採譜もしてもらいました。その曲を工房でみんなで歌う…それがこのピアノの音出しになりました。

その時の様子はこちらです。

前半は筒井さんのピアノ演奏、後半が合唱になっています。

工房ができて10年、初めての合唱になりました。まさか自分達自身で歌うことになるとは思いもよらないことでした。うまい下手は関係なく、とにかくそれぞれが精一杯歌いました。

出荷前日。
とても良い時間になりました。

次は工房での最終日について書きたいと思います。

新生釜石教会、津波被害のピアノ修理、アクション修理。

新生釜石教会、津波被害のピアノ修理。

後は中身、アクション修理です。

アクションは泥と海水でこの様な状態でした。

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ほとんどの部品は動きも悪く、後々問題が出てしまう可能性があるので、交換できるものは交換することにしました。アクション部品メーカーの常磐さんにオーダーをしました。

上が古いもの。下がオーダーしたもの。

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写真では見にくいですが、細かい所まで泥が入ってしまってました。

ハンマーと呼ばれる弦を叩く部品。
上が古いもの。下が新しいもの。

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新しい部品はピカピカです。

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それぞれ、みんなで新しい部品に取り付け作業をしました。

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新しいもの交換するということは、元あるものとのマッチングが大事になります。寸法を計算し、試しに取り付けたり、試行錯誤しながらの作業です。

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果たしてそれが本当に上手くいくのか…。判断決断実行の連続でした。

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全て部品を取り付けたあと、調整をします。

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音が出るまであと少し。

新生釜石教会、津波被害のピアノ修理、響板修理

新生釜石教会、津波被害のピアノ修理。

今月に入り、修理も大詰め。

まずは響板修理から。
響板はピアノの心臓部。弦の振動を駒を介して響板に伝えます。ピアノにとって、大事なパーツの一つです。

今回、あれほどの津波に被ったにもかかわらず、奇跡的に割れがひとつもない状態でした。しかし海水に浸かってしまっていたので、再塗装をすることにしました。

まずは古いニスをアルコールで剥がします。燃料用アルコールですが、酔っ払いそうな匂いです。

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次に再塗装をする前に、響板の上面を研ぎます。

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サンドペーパーで120→240→320番と段階に別けて研磨し、その後新しいニス塗りをしました。ぬりも何回かに分けて塗ります。
研磨と塗りを何回かして、最後の塗りの前に、響板にロゴを入れます。

通常はそのピアノメーカーのものを響板に付けるのですが、今回の修復は津波という経験をしたピアノ、教会のステンドグラスに文字を入れ、デザインしてもらいました。(文字のデザインしてくれたのは槇山淳子さん。本業は英語の翻訳家。以前工房のホームページのデザインもやってもらいました)

出来上がりが木の色に合うか不安でしたが、試しにニスを剥がす前の響板に貼ってみたら、綺麗にできました。

さて本番。
貼るのも失敗できない慎重な作業。

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綺麗に貼ることができました。

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その後、再塗装をし、響板修理は終わり。

弦を張る作業です。