ホルーゲル 響板修理

関東地方が今週梅雨入りしました。しかしここ2日間は、日ざしが痛いぐらいの晴天に恵まれて帽子や日傘が大活躍です。明日以降は雨傘の出番が続くのでしょうか。少し憂鬱な気分ではありますが、四季の移り変わりを肌で感じます。

工房では、ホルーゲル(GP)の響板修理をしています。
まずは響板割れの埋め木から。
響板はピアノの心臓部です。ハンマーが弦をたたき、弦振動が駒を通して響板に伝わります。そして響板全体が振動することで音が大きくなり、スピーカーのような働きをします。また音量だけでなく音色にも影響があります。
響板割れは長年の温度、湿度変化によって起こります。今回の響板はけっこうな数の割れが見られました。

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割れている場所をよく見ると、板と板のはぎ合わせ部分が割れていました。どうやらはぎ合わせの接着剤が良くなく、接着不良になり引き起こされたものでした。

修理はまず、割れの部分に専用の埋め木が入るように、機械で加工しました。写真にはないですが、慎重に真っすぐ線を引くように機械を動かしていきます。部屋中に木材の匂いが広がります。その後、さらに埋め木を手作業で微調整していきます。何度も入れて確認しながら、ぴったり合うようになったら接着します。

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埋め木の接着後、響板と面になるまで埋め木の出っ張りを削りました。ふと気づくと全身が粉まみれになっていました。

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今回は全部で16本の埋め木をしました。デカール(メーカーのステッカー)にも埋め木が入ったので、後でデカールを補修しようと思います。
響板修理、次は響板のニス塗り直しを行います。響板がどんどん元気になっていくような気がしています!

ベルトーン 外装磨き

今日から6月に入りました。そこかしこでアジサイが美しく咲き始めていますね。アジサイは色彩が豊富で大きさも様々。道端にもたくさん咲いているので、歩きながらふっと心が癒されます。

工房では、ベルトーン、モデルFU33の外装を磨きました。

磨き前は、もやもやした膜で覆われているような状態で、全体が白くくすんでいました。
今回の外装はカシュー塗料で塗装されていました。カシュー塗料は、カシューナッツの殻から絞った油を原料としている塗料です。本来の光沢感がある塗面が蘇るようにバフで磨いていきました。

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磨いていくと、くすみが段々と取れていき、そこからピカッとした黒色の塗面の顔が出てきました。例えるならば、古い角質がボロボロと落ちて本来の美しい肌に戻っていくような感じです。丁寧に、そして慎重に塗面の様子を見ながら進めていき、本体と各パーツの外装は光沢感がある中に落ち着きも感じられる仕上がりになりました。

そして、ペダルと蝶番の金属磨きをしました。ペダルは手磨きで行い、表面に付着したサビをきれいさっぱり落としていきました。

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屋根と鍵盤ふた、譜面台に使われている蝶番は、手磨きとバフで細かいところまでしっかり磨きました。

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ペダルと蝶番の輝きが復活して、外装の黒色とのコントラストが映えると思います。

また、音量をかなり小さくできるマフラーペダルのマフラーというフェルトがかなり傷んでいたので、新しく交換しました。

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ペダルをセットして弾いた時、どのハンマーもマフラーにしっかり当たるように微調整を繰り返し行い、新しいマフラーが完成しました。

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外装関係の作業は、なかなか体力を消耗しますが、どんどんキレイになっていく様が作業をしながら感じることができるので、そういったところがとても面白いです。
ピカピカの見た目はやはり気持ちが良いです!

ベルトーン アクション修理

5月も残りわずかとなりました。今月はゴールデンウイークに始まり、こどもの日、母の日、早いところでは運動会などイベントがたくさんあった月でした。来月は梅雨が始まり、雨の日が多いのでしょうか。どんな1ヶ月になるか楽しみです。

工房では、ベルトーンモデルFU33の修理が進んでいます。
今回の修理のメインであるアクション修理を行いました。
まず、センターピン交換をしました。
センターピンは、アクションパーツの運動の軸となるところで、人間で例えると関節部分にあたります。

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修理前の状態では、弾いた時に音が出ない、弾きにくい鍵盤が多くありました。今回のこれらの原因の多くは、センターピンが固くなっていたことだと考えられます。センターピンを適切な固さに調整することで、アクションパーツの運動がスムーズになり、弾きやすさにも繋がっていきます。
センターピンは固さに応じて太さを選びます。

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ハンマー、ウイッペン、ジャックというパーツのセンターピンをほぼすべて交換しました。

ハンマーフェルトはファイリング(ハンマー整形)をしました。
音色が豊かにはっきり発音するように、1本1本手作業でフェルトの形をヤスリで整えました。

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形が整うと同時に、フェルト表面の黒い汚れも取れ、見た目もキレイになります。

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ハンマーの戻りを助けるブライドルテープという部品は、ブチブチとテープが切れてしまったので、新しく交換しました。

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また、鍵盤はキレイに掃除をし、鍵盤がおさまるバランスピン、フロントピンは丁寧に磨きました。くもっていたピンが手触りつるつる、見た目ピカピカのピンに生まれ変わりました。

(バランスピン 磨き後)
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アクションと鍵盤の修理が終わり、本体に取り付けました。整調作業をしていないので、タッチにばらつきはありますがアクション部品がスムーズに動き、明るい音色をしています。とても仕上がりが楽しみです。

ベルトーン 入庫 修理開始

ゴールデンウィークが終わり、工房にも穏やかな日常が戻ってきました。
今週は雨が降って気温も下がり、しまったばかりの冬物を引っ張りだすぐらいの寒さの日もありました。日によって気温差が激しいので、体調には十分気を付けたいと思います。

工房では、ベルトーン、モデルFU33を先日入庫しました。

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1969年(昭和44年)製造。修理をしてお客様宅へ納めます。
今年の冬から春先にかけてベルトーン、モデルNo50(1965年前後製造)を修復しましたが、今年2台目のベルトーンです。

修理を依頼されたお客様が子供の頃弾いていたピアノです。
お客様は再びピアノレッスンを再開されて、しばらくは電子ピアノで練習していましたが、やはりアコースティックピアノで演奏を楽しみたいと思われて、ご実家にあったベルトーンを運んで使えないかと考えられました。しかしピアノは長年弾かれていなかったため、弾ける状態であるのかどうかを見てほしいと、当工房にご依頼がありました。
ピアノを見てみると、アクション部品の劣化や不具合が見られ、満足に音が出せる状態ではありませんでしたが、音の質はしっかりとしていてパワーを感じました。音を鳴らしていると、眠っていたピアノがむくっと起きてきた感じがしました。
お客様と相談して、心地よく演奏ができるように、工房で必要な修理をすることになりました。また楽しんで弾いていただけるように、作業していきたいと思います。

入庫後、全体の状態を確認して作業は掃除からスタートしました。

本体ピアノ裏は、普段は中々掃除できないところです。

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この機会に長年溜まった汚れをしっかり拭き取り、スッキリしました。

本体内部にもホコリや汚れがこびりついていて、金属部品はサビているところがありました。作業によってはピアノを寝かせて行いました。

(鍵盤下の掃除)
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(チューニングピン磨き 左側、磨き前 右側、磨き後)
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作業を進めていくうちに、汚れでどんよりしていた景色が、どんどん明るくなっていくのが分かりました。

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掃除前と比べると、リフレッシュしたような感じになり、とても気持ちがいいです。

次はアクション修理に入ります。

YAMAHA U1 出庫

明日からゴールデンウィークに入りますね。ゴールデンウィーク期間は音楽イベントが盛んに行われている地域もあり、普段よりも街が音楽で満たされている気がします。皆様よい休日をお過ごしください。

工房では先日、ヤマハ、モデルU1の修復が終わり、無事に出庫しました。
今回の修復では、アクション部品の交換、低音弦(巻線)の交換、ハンマーファイリング(ハンマー整形)、白鍵の交換、外装磨き等の作業を行いました。
元々の音の鳴りは悪くなかったのですが、音色が音域ごとにばらつきがあったことや、弾くと種類の違う雑音が出ていたりと、お客様も演奏していて色々と気になるところがありました。
機能的に問題があったところを直して整調作業をした結果、タッチがなめらかになり、アクションの不具合が原因で出ていた雑音がなくなりました。

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音色の面でも格段に良くなりました。少しこもった音で弦からも雑音が発生していた低音弦は、交換したことでクリアな響きに変わりました。ハンマーファイリングと整音もしたので、全体的に丸い暖かい音色になりました。

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そして白鍵を交換して外装を磨いたことで、白鍵の白色と外装の黒色、そして金属の金色のコントラストが美しいピアノの姿になりました。

(金属の蝶番もピカピカになりました。ピアノ全体写真を取り忘れてしまいました・・)
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どの修復の時もそうですが、修理を進めていると、ピアノがどんどん良くなっていく、蘇って元気になってきたと思う瞬間があります。今回もそんな瞬間を肌で感じることが多々ありました。それはこの仕事の面白さのひとつでもあります。
納品後、お客様からは「外装や鍵盤がピカピカにきれいになって、音が丸くなりましたね。修理をして良かったです」とおっしゃっていただきました。これからも、このピアノからは素敵な歌声がたくさん響くことでしょう。