レスター 象牙鍵盤の漂白

暦の上では立秋になりましたが、まだまだ暑さは和らぎそうにないですね。甲子園も開幕して、こちらは『熱い』試合が連日繰り広げられています。球児の皆さん頑張ってください!

工房では、レスター、モデルNo.200の修理が進んでいます。
先日は象牙鍵盤(白鍵)の漂白を行いました。
このレスターの白鍵は象牙で、指なじみが良く弾きやすい材質なのですが、経年変化や汗などで段々と黄ばみが出てきます。特に中音~高音にかけては、よく弾くところなのでだいぶ黄ばみが目立っていました。

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現在象牙は手に入らず、新しい象牙と交換することが出来ません。今回は象牙を漂白して、黄ばみを出来る限り落とし、柔らかい白さが出てくるようにしたいと思います。

象牙の漂白はお天気が良くて日ざしが出ている時間帯がチャンスです。漂白をした日は、ジリジリと真夏の太陽が照りつける絶好のお天気でした。日ざしが良く当たるところに象牙鍵盤をセットして象牙の上に障子紙を置き、その上から過酸化水素水(オキシドール)をたっぷり塗って日ざしに当てます。

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この作業を数回繰り返し行います。あまりやり過ぎると、象牙を侵してしまう恐れがあるので、様子を見ながら進めていきました。障子紙を剥がすと紙に黄色が付着していて、徐々に黄ばみが薄くなっていくのが分かります。

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数回漂白を行い、黄ばみがかなり取れ、見た目が大きく変わりました。

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象牙鍵盤はどこか暖かみを感じます。象牙表面を布で拭いてこの日の作業は終わり、後日バフをかけてツルツルピカピカに仕上げます。お天気にも恵まれ、充実した作業が出来ました!

YAMAHA C5 弦交換

8月に入りました。連日お天気良く、青空が広がっています。ここ最近はセミが勢いよく一斉に鳴いていますね。しばらくの間、鳴き声を聞きながらのピアノ作業となりそうです。

工房では、YAMAHA、モデルC5の弦交換をしました。先週ご紹介したレスターの弦交換に続いて、YAMAHAも真新しい弦を張りました。
今回のYAMAHAは奥行が197㎝とグランドピアノの中では大型の方なので、弦の長さもそれに伴い長くなります。どのピアノでも共通しているのは230本近い弦を張っていくので体力と集中力、そしてリズム良く進めていくことが大事です。

写真右の木箱に弦が入っていて、木箱の口から弦がスルスル出てきます。因みに弦はいつもドイツのレスロー社のものを使用しています。
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弦が長くなってくると、作業に応じてピアノのサイドに回ります。
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そして大きなハンマーでチューニングピンを打ち込んでいき、チューニングピン全体の高さを揃えます。最初のうちはバラつきがありますが、徐々に揃っていく光景は面白いです。

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作業の後半から終盤にかけては弦の張力を上げることと、チューニングピンの高さを揃える作業とを交互にやります。この段階に入ると細かな工程が多くなり、仕上げに向けて着々と進んでいきます。

そうして丁寧に作業を進めていき弦交換が終了しました。

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鳴らしてみると、ふくよかで明るく透明感のある音色が響き渡りとても嬉しい瞬間でした。今後は調律を繰り返し行い張力を安定させます。修理はこれからハンマー交換などのアクション修理に入ります。

レスター 弦交換

7月も残りわずかとなりました。台風が接近中とのことで、工房から見上げる空は心なしか曇ってきたように思います。大きな被害がでないように願うばかりです。

工房では、レスター、モデルNO.200の弦交換をしました。
本体の解体後、本体部品の磨きと掃除をしてからの作業スタートです。

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最高音から張り始め、中音~低音と進んでいきます。弦の太さは段々と太くなっていき、張る長さもぐんぐんと長くなります。低音の巻線、特に最低音のあたりは一本の弦の重みがずっしりと手に感じます。

張った直後は弦を弾いても、まだまだ音というにはほど遠いものですが、そこから弦の張力を少しづつ上げていきます。同時にチューニングピンを大きなかなづちで打ち込んでいく作業などの、体力を必要とする場面も多くありますが時折休憩を挟みながら着々と工程が進んでいきました。

張った直後の低音巻線
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チューニングピンの打ち込み風景 打ち込む音がガンガンと大きいので耳栓が必需品
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仕上げの段階の時には弦はピンと張り、指で弦を弾くと明るく伸びのよい音色を感じました。張りたての弦を鳴らす瞬間は毎回ワクワクします。

 

終了後、ピアノを起こしました
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アクションを付けて音を出す日が楽しみです。暑い日の作業でしたが、順調に弦交換が終わりほっとしました。次はアクション修理に入ります。

Bechstein D 定期メンテナンス

とにかく暑い!という会話が至るところで聞こえてきた今週です。今朝のニュースでは、この土日の暑さを「極暑」という表現を使っていましたが暑さを表現する言葉は多彩ですね。
ほんのわずかな風が心地よいと感じる今日この頃です。

そんな暑い埼玉を今週2日留守にして、会津田島(南会津町田島)へ、ベヒシュタインの定期メンテナンスに行ってきました。ピアノは、御蔵入交流館という複合施設内の文化センターにあります。
ご縁がご縁を呼び、10年ほど前からさいたまピアノ工房が定期メンテナンスをしています。今回は工房スタッフ3人、1泊2日の日程で行いました。

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会津田島に到着した時、開口一番「涼しい!」と感激したほど爽やかな風が吹き空気が澄んでいる天候で、暑さにやられていた私達には願ってもない環境でした。それでも地元の方は「暑いですねー」と真逆のことをおっしゃっていて、なんだかおもしろい会話になりました。
会津田島では明日から三日間、『会津田島祇園祭』というお祭りがあり、毎年この時期になると町の方は準備などで忙しくなるそうです。ちょうどお祭り前だったので、駅ではお祭り音楽が流れていたりと町中がとても活気に溢れていました。

さて、ピアノはベヒシュタイン モデルD コンサートグランドピアノです。

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最初に音を鳴らした時はタッチが少し重く感じましたが、これはピアノ内部で多少の結露が発生したためにアクションの動きがやや鈍くなってしまったものでした。
まずは整調、調律の前にアクションと鍵盤を外して部品の金属磨きと掃除をしました。

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これは毎年行っている作業です。金属部品を触ってみると、かなりべたつきがあり滑りが悪くなっていたので、丁寧に磨いて触り心地がつるつるになるように仕上げました。
下の写真は鍵盤についているキャプスタンボタンという金属部品の磨きです。ボタンの上の面が見た目でもわかるぐらいにくもっていました。写真にはありませんが、鍵盤を収めている金属のピンも磨きました。

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またダンパー(止音をする部品)も全て外して、ダンパーワイヤーという金属部品も同じくべたつきがあったため磨きました。

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この作業後、アクションを一度ピアノに戻して弾いてみると、最初に比べタッチが軽くなっていました。
今年は3人での作業なので、この機会に始めて大屋根を取り外しました。今がチャンスとばかりに大屋根の蝶番磨き・ヒンジのサビ磨き・蝶番のネジ締め、そして大屋根があることで普段は届かない所の掃除を行いました。

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サビや汚れを一掃することができて良かったです!そしてしっかりと状態を確認しながらアクション調整、整音と調律を行いました。

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メンテナンス終了後のピアノは、芯のあるしっかりとした音色と重厚な響きが素晴らしく、ホール全体を包みこんでいました。今後も地元の方に愛されるピアノとなってもらいたいです。担当者様や町の方にも大変お世話になり、とても充実した2日間となりました!

YAMAHA C5 本体磨き&掃除

明日から三連休の方も多いのではないでしょうか?猛暑が続くらしいので、プールや涼しい施設など賑わいそうですね。こちらでは日曜日に地域のお祭りがあります!

工房では、YAMAHA、モデルC5の本体の磨きと掃除を行いました。

下の写真はアグラフという部品で、このピアノには低音と中音に付いています。(ピアノによって異なります)このアグラフの穴に弦が通ります。サビが付着していて、だいぶお疲れの様子。小さい部品でなかなか磨きにくかったのですが、道具と指をうまく使ってきれいになりました。

(スチールウールで磨きました)
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(ピカピカになりました)
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高音には、カポ・ダストロ・バーという部品があります。(通称カポ)鉄骨の一部分にこの部品はあり、鉄骨の裏側なので普段は見えません。このカポが弦を上から押さえています。

(鉄骨裏側から見た景色。弦の張力が落ちていて分かりずらい写真ですが、弦に当たっている銀色の長細いものがカポ・ダストロ・バーです)

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カポには年月とともに弦のあとが深く付いたりサビも発生し、それらが原因で音色の雑音を引き起こすことがあります。高音域にはザラっとした音色がありましたが、カポを磨くことで雑音の解消に繋がります。このカポは鉄骨の裏側にあるため鉄骨を外した時は裏返して普通に磨けるのですが、今回のように鉄骨を外さずに磨く場合は目視が難しいので、鏡やライトを使って工夫しながら弦のあとを取り除くように磨きました。

駒ピン、ヒッチピンというピン類はくもっていたので、こちらも一本づつ磨いていきました。徐々に本体内部も光りだしました。

(ヒッチピン 右側 磨き前 左 磨き後)
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磨き作業後、鉄骨と響板の掃除を行いました。どちらも掃除前は真っ黒に汚れてはいませんでしたが、掃除をすると色味がはっきりして全体がぱっと明るくなりました。

(磨き、掃除前)
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(作業後)
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本体の磨きと掃除が終わり、次は弦交換に入ります。