ヤマハG2 アクション納品

工房では、G2(グランドピアノ)のアクション修理が終わり、納品先にて調整、調律、本体の掃除をしました。

※G2のアクション修理の内容はこちらをご覧ください。

朝9時、キレイになったアクションを車に乗せ、親方が運転して納品先へ向かうのを見送りました。

私は工房にてホルーゲルの外装磨きをしていました。

お昼になり、親方から電話でピアノの内部の掃除をしたいから手伝ってほしいと連絡があり、私も納品先での作業を手伝うことになりました。

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納品先のお店「酒×classic 音楽準備室」に到着しました。丁度この日が開店日でした。

音楽準備室というお店の看板がとても素敵です。ドアを開けて中に入ると内装もまた素敵です。

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お店のコンセプトが「お酒×classic」と「おもちゃ箱をひっくり返したような空間」、音楽だけじゃなく、スポーツ観戦もするようです。鉄道模型も置いてあります。遊び心がたくさん詰まったお店です。

そして、この空間に現在工房で修復中のホルーゲルも、もうすぐ仲間入りします。

場所は東大宮駅からすぐの場所にあります。

↓お店のHPはこちらです。

酒×classic 音楽準備室

開店祝いのお花が飾られていて、これから何かが始まる雰囲気の中、私達はピアノの作業を進めます。

まず、フレーム、響板に積もったホコリを掃除機とブロアーで取り除き、拭き掃除をしました。
その後、親方は音やタッチを整えていきます。

そして、目立つのがフレームについたシミのような汚れです。

弦と弦の隙間から水で湿らせた綿棒で擦ると汚れは落ちました。

ここから、丁寧に綿棒で地道に汚れを取っていきました。

フレームを拭くと綺麗な金色が出てきました。

ピアノの音もタッチ粒が揃い、ハーモニーも整い、心地よい音色になりました。

作業を終え、道具を全て片付け、ピアノ全体の再確認をし、開店前とお店を後にしました。

もう少しすると、ホルーゲルが到着します。2台のピアノがどのようなハーモニーを奏でるか、今から楽しみです。

by真帆

ホルーゲル 張弦

工房では、着々とホルーゲル修復が進んでいます。

今回は張弦について書きます。

※ホルーゲルの記事で以前載せた響板塗装

も合わせてご覧ください。

響板塗装が完了し、鉄骨を本体に乗せ、鉄骨ボルトを全て締め、さあ、これから張弦だ!と行きていところですが、その前にやる事がたくさんあります。

ピンブッシュという、チューニングのトルクの保持に関わる円筒形の小さい木材を約230個、鉄骨に打ち込みます。

次に、先程打ち込んだピンブッシュに穴を開けていきます。

弦を張る前にフェルトやクロスを取り付けます。

ダンパーガイドレールも取り付けます。これも弦を張ってからでは大変です。

響板やフレームをキレイな布で拭き掃除します。弦を張ってしまうと弦が邪魔で掃除がしにくくなるので、今このやりやすい時に、やってしまいます。

いよいよ張弦です!

高音部から順に、一本一本テンポよく丁寧に張っていきます。

以前にも書きましたが、ピアノ一台に約230本ものチューニングピンを重いハンマーで打ち込むのでテンポよく集中して行います。

疲れる作業なので、ケガやミスをしないように、途中で休憩を取ります。

今回は、休憩していい事がありました。このホルーゲルは響板を抑える細い板が、奥かまちの響板部にネジ止めされていたことを忘れていたことに気が付きました。どうしよう、と戸惑いましたが、幸い高音部までしか弦を張っていなかった為、弦の下をくぐらせて取り付けることが出来ました。

全ての弦を張り、ある程度均一に弦を引っ張ったらチューニングピンの高さを打ち込み揃えていきます。上の写真にも写っている大きなハンマーで、最終的には1ミリ以下の精度まで高さを調節します。

これも、かなり神経と腕力を使うので大変です。目と肩にくる作業です。

そして、チューニングピンに巻かれた弦のコイルの全てを綺麗に整えながら、弦を弾き、音を聞いて張力あげていきます。一部だけ上げるとピアノの本体に偏った負荷がかかるので、全体をできるだけ素早く、少しずつ徐々に上げていきます。

見た目や音もダルダルだった弦は、ここまでくるとピンと張られて、ピアノらしい音になってきます。

ピッチが上がると、張弦は完了ですが、弦が新しく緩みやすい為、すぐに下がってしまいます。今回ブログには書きませんでしたが、修復前から本体のケース歪みや接着不良、更に鉄骨と本体のねじ止めの一部に問題があった為、いろいろと工夫や改造を施す必要がありました。なのでピッチが正常に安定するかずっと不安でしたが、全く問題なく作業を進めることが出来ました。

弾かれた弦から出た、張りのある、なんとも美しい音が、長かった約半年の、本体の全て作業の終わりを告げてくれているようだと、親方はしみじみ語っていました。

今後の修理は、ホルーゲルのダンパーフェルト交換、ハンマー交換に移っていきます。

by真帆

レスター 外装磨き 最終調整

レスターの修復がようやく終わり、先月末にお客様のもとへ帰っていきました。

今回は、外装磨きと音色やタッチの仕上げの作業について報告します。

外装磨きは大変でした。外装の塗料はピアノによって異なり、このレスターは、今ではほとんど使われなくなった、カシューが使用されていました。漆の代用として使われている合成樹脂塗料で、カシューナッツの殻から絞り出した油が原料になっています。

いつもより、曇りのある塗装面をバフで磨いていくと、他の塗料とは違い、汚れと磨き剤が塗面の上で混ざってさらに曇り、焦ってしまいとても大変な思いをしました。しかし、バフを更に根気よく、慎重にかけていくと、くすみが段々と取れていき、まるで曇りが晴れるように、綺麗な黒い鏡面のような艶が現れてきました。お肌に例えるならば、古い角質がボロボロと落ちて、輝く美しい肌になるような感じです。

鍵盤蓋のロゴのところも綺麗に磨きました。

ロゴの部分はかなり茶色く錆びていましたが、錆び落としとコンパウンドを使って、手磨きで綺麗に落ちました。

その他に、蝶番、蝶番ネジ、ペダルなどの金属部品も磨きました。ちゃんと磨けばピカッと光るので、綺麗になると嬉しくなります。

大変だった外装が終わり、仕上げの調律、調整、整音をしました。

音の出方、音の粒、タッチも揃っていき音に厚みが出ました。

修復前に感じた、暖かいピアノの音も残りつつ、フレッシュな新しいピアノの音を感じる仕上がりになりました。

これからお客様宅で弾いてもらうと、更に違った音の表情も出てくると思います。そんなところも含めて、今後も末永く楽しくつきあっていただけたらいいなと思いながら、帰っていくレスターを見送りました。

by真帆

YAMAHA G2 アクション・鍵盤修理

雨の日がしばらく続きましたが、関東は今日は気持ちの良い秋晴れです。外に出ると空気が清々しく、日向ぼっこしたい陽気です。今日がチャンスと、朝はみんなで工房のプチ大掃除を行いました!

工房では、YAMAHA、モデルG2のアクションと鍵盤の修理をしました。
こちらのピアノは、ただいま修理中のホルーゲルを持っていらした方が所有していました。2台のグランドピアノは知人のM様に引き継がれて、来月頃オープンする飲食店に設置される予定です。
G2のピアノは、本体の状態は問題なかったので、アクションだけ引き取り工房で修理を行うことになりました。

アクション部品の修理では、ハンマーファイリング(ハンマー整形)とハンマーシャンクローラー交換を行いました。
ハンマーフェルトはハンマー交換をするほどの状態ではありませんでしたが、フェルトに弦の跡がしっかり付いていたので、ヤスリで弦の跡を削り全体の形も整えました。
ファイリングをすることで、音色がより豊かに響くようになります。

削ってフェルトの汚れも落ち、見た目がキレイになりました。
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ハンマーシャンクローラーは、ハンマーが弦を打つ時のアクション運動においてとても重要な部品です。鍵盤を押す度に他の部品と当たる為、元々付いていたローラーは激しく摩耗していました。タッチに影響が出るため、ローラーごと新しく交換です。

交換前。かなり摩耗していて、触るとデコボコしていました。
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新しいローラーに接着剤を付け、かなづちで叩いてはめ込みます。
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交換後。スムーズに弾きやすくなると思います。
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鍵盤は白鍵の木口(こぐち)と呼ばれる正面の部分が劣化で変色してしまったので、木口のみ交換しました。交換した木口は真っ白でピカピカ!交換前と比べるとパッと見た時の印象が全然違います。

交換前。機能には問題ないのですが、見た目が良くないです。
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交換後。白くつやつやしています。
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また、鍵盤のブッシングクロスという赤いクロスが摩耗していたので貼り換えました。このクロスは鍵盤の裏側に付いています。クロスが摩耗していると、弾いたときに鍵盤がブレてとても弾きづらいです。

接着剤はニカワを使いました。写真は貼り替え中の作業風景です。
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そして鍵盤が収まるバランスピン、フロントピンは1本1本丁寧に磨きました。

右が磨き前、左が磨き後。かなり黒ずんでいてサビついていました。根気のいる作業ですが、鍵盤のスムーズな動きに関わるのでこのピンはツルツルの状態がベストです。
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すべての修理が終わりました!

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今回の修理はどれも結果的に音色とタッチに大きく影響する修理なので、本体に設置して弾いた時の変化が楽しみです!

by志乃

レスター 第1調整

学校では運動会や文化祭、目黒ではサンマ祭りなど、行事がすっかり”秋”ですね。

さて、レスターは、全てのアクション修理、取り付けが終わりました。音は出るようになりましたが、タッチはバラバラで、演奏もままならないレベルです。

そこからいいタッチを作るのが整調になります。全ての部品を最適な状態に揃えると、ピアノを気持ち良く演奏できるようになります。

今回は、その整調作業のハンマー調整と、白鍵ならしについて書きます。

ハンマー調整

ハンマーの動きを、最適にする工程です。全てのハンマーを、弦に対して真っすぐ、正面を向いて、真ん中に当たるようにします。

この3つ精度を丁寧に上げて行くと、「おっ?ピタッといいところに近づいてきた!」と、気が付くときがあります。これを感じたときは、やっとここまで来たかと少し達成感があります。見た目だけでなく、音の粒も揃った感じになります。

白鍵ならし

鍵盤の上面の凸凹を平らにする工程です

上の写真は白鍵が凸凹している状態です。左右に傾いたりもしています。

傾きを取った後、白鍵の高さを定規で測定し、ならしの基準を決め、色々な厚さのパンチングペーパーを使って凸凹を取っていきます。

白鍵の高さを均一に揃えました。凸凹していなくて、気持ちが良いですね!

そのほか、主に10の工程があります。どの工程も、基準を決めて、それに全て揃えていきます。

こうして、整調を終えてから、演奏してみました。しっかりとして、それで暖かく響く、いいピアノになると確信しました!

因みに、これまでのアクション修理にエラーがないか、寸法はこれで良かったかも、確認しました。大丈夫そうです。上手くいきました!

整調はさらに第二整調でまだまだ精度を上げて行きます。更に気持ちを引き締めて行きた いと思います。

完成が楽しみです。

by真帆